信あっちの世界ゾ〜ン・第壱夜「赤い防空頭巾」
さんがつうさぎさん談
それは私が大学1年生の頃でした。 故郷を離れて、名古屋で一人暮らしをしていたのですが、同じように一人暮らしをしていた 現在のダンナと付き合うようになり、自然の成り行きで彼と同棲するようになりました。 だって、ホテル代がもったいないんだも〜ん(^-^) そんなある日、彼の元に故郷の友人Sくんから手紙が届きました。 「おい、一体何しとるんや!いつも家に電話掛けてもおらんやないか。 お前の母ちゃんも心配しとるぞ。来週、おまえんとこ様子見に行くけんの!」 私達の両親はお互い割に古風なタイプ。 同棲をしていることがばれたら、大学を退学してでも故郷に連れ戻されかねません。 そこで、故郷の友人にさえ交際を内緒にしていたのです。 私のマンションに転がり込んでエッチ三昧の日々を送っていたいた彼ですが、 友人が来る期間だけ、泣く泣く自分のアパートに戻ることにしました。 折悪しくも前期テスト終了日。それから補講期間まで数日ありました。 私は補講があるので、実家に帰るわけにも行かず、 彼と過ごす予定だったので他の友人の誘いも断ってしまっていました。 テスト&補講期間はバイトも休みの連絡を入れてしまっていたし・・・。 数日間ですが、孤独で退屈な日を過ごさなければならなくなってしまったのです。 「ま、いいか」 本来が楽天家のうさぎです。 彼と会えないなら、普段、彼と一緒には行けないところに遊びに行っちゃえ〜♪ と、言うわけで大阪で言うところの戎橋、 広小路栄から久屋大通りのセントラルパークに掛けて、 当時流行の「ボディコン」に腰まで届く「ソバージュ」の髪で出掛けたわけでございます。 今から思えば、それが間違いの元でございました。 (続く) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ご飯を作りながら書いていたので続きが遅くなりました。 うふ、あたしって、いい奥さん(^-^)・・・さて、続きを 広小路栄交差点。そこは夜の戦場です。 さすがに「ボディコン」「ソバージュ」の威力はすごく、 一時間のうちに23人もの哀れな犠牲者がうさぎの前に散っていきました。 23人の犠牲者を出しながらうさぎが待っていたもの、それは、 ディスコの黒服でした。 「タダ券が欲しい!!!」 タダ券があれば、中で飲み食いは自由。 貧乏学生だった私はナンパ男よりそちらの方が重要だったのです。 その日は気合いを入れすぎてどうやらスタートが早すぎたようです。 一時間ほど、栄交差点をぶらぶらしていましたが、お目当ての黒服さんはなかなか現れませんでした。 そのうちにうさぎの目の端に気になるものがちらちらと横切るようになりました。 小学生? 夜の繁華街を赤いランドセルの女の子が歩いているのです。 (続く) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 夜の繁華街に小学生? いえ、でも、どうみてもあの背格好は小学生ぐらい。 おかっぱ頭で背中に赤いランドセルが・・・。 不審に思いながら目で追っていたところに急に声を掛けられてはっとしました。 「ね〜、彼女。一人?」 あ!黒服だ!・・・ でも、アムロちゃんのダンナが昔アイドルしていたときのような格好で化粧が濃い。 こいつはMAHARAJAの店員だ。 MAHARAJAはドリンクとフードがチケット制なので入場がタダでも中でタダ飯にはありつけません。 「ごめ〜ん、今から帰るとこなの。またね〜!」 うさぎはきびすを返して立ち去ろうとしました。 ところが、バイバイの手を黒服にガシッと捕まれてしまったのです。 「いーじゃん、ちょっと遊んでこうよ。俺、君のこと気に入っちゃったんだ。」 ふざけんな〜!あたしは気に入ってないぞ〜! うさぎは必死で手をふりほどこうとしましたが、優男風に見えるその黒服君、やたらと力が強いのです。 半分お持ち帰りになり掛けたその時、どんっと鈍い音がして黒服のバランスが崩れました。 さっきの小学生が黒服に体当たりして逃げて行くところでした。 怒って小学生を追いかける黒服・・・。 ラッキー!チャンス! 心の中で「ありがとー!!!」と叫ぶと、私は地下鉄の駅まで必死で走って逃げました。 逃げざまに振り返った目の端に、 女の子がやはり、振り返って微笑むのが見えたような気がしました。 (続く) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− タダ飯にもありつけず、その上ちょっぴり怖い目に会ってしまったうさぎは 家に帰ってきてから何だかやりきれない怒りが沸々と沸いてくるのを覚えました。 それもこれも、Sくんが急に彼の家に来るなんていうからよ。 私はやり場のない怒りを理不尽にもSくんに向けていました。 しかし、どうしようもないので、そのままふて寝をすることにしました。 布団に入って気分が少々落ち着いてくると、あの小学生のことが気になり始めました。 一体どうして、あんな時間にあんなところに小学生がいたんだろう。 近くに小学校も塾もないはず・・・。 え?そういえば、あれはランドセルだったの? 大きさ的にはそのぐらいだけど、中で筆箱や教科書がカタカタ言う音が聞こえなかった。 それに、ランドセルにしては妙に背中の上の方でぶらぶらしていたような・・・。 あれは、ひょっとして・・・? 防空頭巾・・・? その考えに思い当たったとき、背筋にぞっとするものが走りました。 そう言えば、あのあたりは空襲があって、一面が焼け野原になったと言う話を聞いたことが・・・。 私は布団を頭からすっぽりとかぶって、ぎゅっと目をつぶりました。寝てしまおう。 何も考えずに・・・。その時です! 金縛り! ぎゃー!きたっ!うそでしょー?! 私は必死にもがきました。 が、意志に反して身体はぴくりとも動きません。 そして、頭からかぶっていたはずの布団が独りでにずるずると足元に移動して行きました。 (続く) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 体は動かないのに、目だけは開いたままで部屋の中はよく見えました。 布団の足元に、はっきりと何かが見えます。 電気を消して、暗いはずなのに、色までがくっきりと、 赤い防空頭巾を首から背中に掛けた、女の子が後ろ向きに立っていました。 「ビックリさせてゴメンね。お姉ちゃん。」 女の子の声が頭の中に直接聞こえてきました。 私は恐怖のあまり、頭の中で 「なんで?なんで?」 と繰り返したまま目を見開いて彼女をただ見つめていました。 「淋しかったの。お父さんとも、お母さんともはぐれちゃって・・・。 ずっと、ずっと、探していたの・・・。」 悲痛な声でした。 こんな小さな女の子が・・・。 私の心の中に憐憫の情が湧いてきました。 それに、この子は私のピンチを助けてくれています。 私は心の中で優しく彼女に語りかけました。 「そっか。お父さんとお母さんを探していたの。お名前は?」 女の子は左肩越しに微かにこちらに顔を向けました。 「違うの。お父さんも、お母さんももういない・・・。 あたしが探していたのは・・・。」 女の子はくるっとこちらを向きました。 私は声にならない悲鳴を頭の中に響かせました。 女の子の右目には大きなガラスの破片が深々と突き刺さり、 顔の右半分全部にハリネズミのように細かいガラスの破片が刺さっていました。 顔から滴る血で防空頭巾は赤く染まっていたのです。 「あたしが探していたのは、あんたの目よ!」 女の子はそう叫ぶなり、私の右目に手を伸ばしました。 (続く) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 今にも女の子の手が私の目に掛かりそうになったとき、私は頭の中で叫んでいました。 「やだっ!もう!どうしてあたしがこんな目に遭わなきゃならないのよ! それもこれもSくんが急に来るって言ったからじゃない! 出るならSくんのところへ行ってよ〜〜〜〜っっっっっ!!!!!」 その途端、金縛りが解け、体がふっと軽くなりました。 女の子の姿も消えていました。 私は、急いで電灯をつけました。やはり、何もいませんでした。 私はそのまま灯りをつけっぱなしにして、布団に身体をよこたえました。 疲れていたせいか、アッという間に眠りにつき、そのまま朝を迎えました。 それから3年後、私は婚約者として彼の親御さんに挨拶に行きました。 そして、例のSくんの家にも2人で遊びに行ったのです。 にこやかに談笑する中、笑い話のように防空頭巾の女の子の話もしました。 すると、Sくんの顔色がスッとかわったのです。 「・・・右目?って言ったよね?」 Sくんは例の事件があった翌日に家に帰りました。 ところが、その日から、右目がひどく痛み出し、 瞼全体がひどく腫れ上がり、目がまるで開かないようになってしまったというのです。 医者で見てもらっても原因はまるで分からず、 結局、手術を受けて膿を出さなければならなかったとか・・・。 その痛みはまるで、硝子が目に刺さっているかのようなものだったそうです。 (終わり) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− いやー、ずいぶん長い話になっちゃったんですけど、 どうしてもお話ししておかなきゃならない後日談がありますので、もう一つ書かせてね。 金縛りの最中に他の人の名を呼ぶと霊がその人のところに行くのだと 後から何かで呼んで知りました。私は無意識にやってしまったようですが・・・。σ(^◇^;) さて、Sくんはこの恐怖体験を友人のTくんに話しました。 Tくんは有名な遊び人。 イイネタを仕入れたとほくほくしながら、ナンパした女の子にこの話を聞かせてgetしました。 すると、エッチの最中から右目が痛み出し、結局、満足できない結果に終わってしまいました。 それどころか、彼も原因不明の目の病気になり、手術を受ける羽目になったのです。 Tくんはその話を、やはり、遊び人のMくんに話しました。 彼も、イイネタを仕入れたとばかり、やはりナンパに使いました。 ところが、その直後、やはり、原因不明の目の病気に・・・。 このお話はナンパに使うとたたりがあるようです。 ご注意下さい。 ちなみに、Tくんはその後2回この話をナンパに使い、 そのたびに目の手術を受ける羽目になったそうです。 ちったあ懲りろよ!!(−−#) |
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