あっちの世界ゾ〜ン第三十四夜「釘部屋」

三堂りあるさん談




釘部屋(その1)


これは俺の友達の高校の先輩の話。

つまり俺にとっては赤の他人が体験した話を友達が話してくれたってコトです。


その先輩たちは大の麻雀好き。

中学の時から麻雀をたしなみ、高校になってからは学校をサボって麻雀をしたりするほど。

とりあえず、キ印なくらい好きな人達だったらしい。


そんな人達も高校を卒業すると就職します。

就職先の都合でメンツもバラバラになりました。

一年は誰も会わなかったそうです。

一年後、久しぶりということで、麻雀をやるために集まりました。

するとこれがおもしろい。


「やっぱり、このメンバーでやる麻雀はサイッコーだぜっ!」

ということで、ちょくちょく会って麻雀をやろうということになったのです。

ところが勤務先はバラバラ、どこに集まるかが問題になりました。


そこで金に余裕のある社会人。

それぞれの勤務先からちょうど真ん中に位置するところに

麻雀をやるため用の部屋を借りたのです。

よくやるわな。

築25年とか30年で風呂・トイレ共同とかいうスゴイところだったそうです。

が、

「別に住むわけじゃないしー」

ということでお金を出しあって借りました。


で、お約束なのですが、この部屋が安かった。

ものすごく安かった。

あまりにも安いので不動産屋に聞くと、

「リフォームしていないから安いんですよ。その代わり居心地悪いですけどね」

とのコト。

先輩は納得したそうです。


ところが、その部屋、かなり普通ではなかったのです!

                                           つづく

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釘部屋(その2)


不動産屋と直接部屋を見に行って来た先輩に道案内させて、

麻雀仲間は部屋に行くことにしました。(麻雀道具を持って)


ところが部屋に行ってきた先輩が変な顔をして言うのです。

「あの部屋、変なんだよ。

いや、麻雀するには何の不都合もないんだけど、変なんだ。」

状況を口で説明するより、

実際見た方が分かりやすいということでメンバーは部屋に向かいました。

部屋にたどり着き、仲を見てびっくりしました。

「なんじゃ、こりゃ!」


その部屋の柱という柱には、すべてびっしりと釘が打ち付けられていたのです!

柱の面が見えないくらいびっしりと!


異常としかいえない状況でした。

なにか呪術的な意味合いがあるのか?

前の住人は何を考えていたのか?


「これじゃあ、落ち着いて麻雀も打てねーよ」

「やっぱりそうかぁ」

「それじゃ抜くか?」


先輩たちは胸にこびりついた気持ち悪さを消すために

その日一日を使って部屋の柱に打ち付けられた釘を全部抜いてしまいました。

抜いた釘の数は、買ったらいくらするんだというくらい多かったそうです。

で、抜いたら抜いたで今度は柱にびっしりとある穴が気持ち悪かったそうです。

とりあえず、今日はもう遅いから麻雀は来週の日曜にやろうということになり、

麻雀セットをしまおうと押入を開けると


「うっ、うわぁー!」

「どうした!?」

「何があったんだ!?」


駆けつけた先輩たちが押入の中で見たものは、

押入の柱にびっしりと打ち付けられた釘だったそうです。


                                             つづく

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釘部屋(その3)


部屋の柱という柱に釘が刺さっていた部屋。

前の住人の仕業らしいのだが、あまりにも異常な行為だった。

それでも、メンバーは麻雀をやるためにこの「釘部屋」に集まる。


その日はメンバーの一人がどうしても仕事で抜けられないというので、

メンバーの一人が友達を連れてきた。

その人の名前は仮に「K」としておきます。


さっそく、麻雀を始めます。

お昼頃から始めて、気がつけば日は傾いていました。


ふと、メンバーの一人が「K」を見ると、何か要すがおかしいのです。

目が中を泳いでいる。

考えてみれば、「K」はこの部屋に来てからずっとこんな調子でした。

「ひょっとして、Kって危ないヤツ?」

先輩たちはそう思ったのだそうです。


連れてきた先輩が「K」に注意します。

「変わった部屋だけどさ、麻雀に集中してくれよ。

俺の立場ってのもあるんだから。」

それでも「K」は目を泳がせています。


「おいっ、聞いているのかよ?何、見ているんだよ」

「言ってもいいのか?」

「えっ?」


「言ってもいいのかって言ったんだ。

 みんな嫌な気分になると思ったから黙っていたんだけど、

 この部屋、いるよ。

 さっきから部屋の中をウロウロしている。

 何かしそうだから、ずっと監視していたんだ」


そう、実は「K」さんは、かなり開いちゃっている霊能者らしいのです。

「K」さんのその能力は連れてきた友人も知っていました。

変だと思っていた部屋には、やはり「いた」のです。


「やっぱり、そうかぁ。そんなんじゃないかと思ったよー」

「釘の時点で普通じゃなかったもんな」


ここまでくるとさすがに気持ち悪くなり、

先輩たちはこの部屋を売って、新しい部屋を借りることにしました。


だが、

先輩の一人がとんでもないことを思いついたのです。


「どうせ、売るならさ。売る前に雰囲気いっぱいのこの部屋で、

 怪談とかやらない?」

「いいねぇ」

「やろう、やろう」

「K」さんは止めたそうですが、先輩たちは人を増やせば大丈夫と

知り合いに電話をかけまくってメンバーを集めたそうです。

                                            つづく

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釘部屋(その後)


僕が友人から聞いたこの「釘部屋」の話はここまでです。


友人の言えにも「怪談」の話はきたのですが、

友人は受験で大変な時期だったので断ったのだそうです。

後日、先輩から話を聞けばいいやと思っていたのだそうです。

とにかく、友人は年が明けるまで受験に集中し、

受験が終わった頃、その「釘部屋」の話を思い出しました。


大学は受かったし、久しぶりだしということで先輩に連絡しましたが、

連絡がとれない。

先輩の実家がいつの間にか引っ越してしまったのでした。

先輩も勤め先までやめてしまったようです。

必ず来ていたコミックマーケットにも姿を現さず、まさに音信不通だそうです。


だから、この「釘部屋」がどうなったかも分かりません。

友人はぼそりと言いました。


「その部屋で何かあったのかもしれないね」






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