信あっちの世界ゾ〜ン・第八十九夜「母の体験談です」
優さん談
母は兄を帝王切開で出産しました。 医学上では異常出産ということで、兄はすぐに保育機に入れられました。 まあ兄には特に異常はなく、あくまでも念のためということだったらしいのですが。 12月という寒い季節であったことも理由の一つだったかもしれません。 何しろ昔の話ですから、暖房設備があまり充実していなかったらしいのです。 まあそれはともかく、 初めての子供ということでまずは父が病院にすっ飛んできました。 保育機にへばりつくようにして兄を見ていたそうです。 そんな父を見守りながらも、母は少し疲れていたのでしょう。 保育機のある部屋を出ると、 廊下にある長椅子に腰掛けて窓から外を眺めていたそうです。 冬の寒空の中、換気のためか窓はあいていました。 雨上がりの夜空に星が瞬いています。 ほっと一息つきながら、母がふと目を 凝らすと道路を隔てた向こう側にお墓が見えます。 「病院のそばに縁起が悪い」 そう思うか思わないかの瞬間、お墓の中から火の玉が現れたんだそうです。 母は驚きの余り声も出ませんでした。 ドアの向こうには父がいるのに呼ぶことも出来なかったんだそうです。 母が見守る中火の玉はゆっくりと上昇し、 弧を描くようにして向こう側へと消えていきました。 しばしの間は幅茫然自失だったそうですが、 不思議と恐怖は感じなかったそうです。 それどころか、きっと御先祖様が兄を祝福してくれているんだと思ったそうです。 あれから三十余年。 兄はむろん元気で、今年めでたく結婚いたしました。 |
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