あっちの世界ゾ〜ン第十弐夜「どうも、オレは無霊力者のようだ」

けいさん談




恐怖というものは忘れた頃にやってくるもの、と聞くが、今はそんなに恐怖じゃない。

記憶は薄れていくものらしく夢なのかなんなのか。

とにかく、小学生の僕には厳しい体験でした。(実話)


風の強い夜のこと。

妹が駄々をこねるので強風にも関わらず窓を開けて寝ていた日のことです。

あお向けで寝ると僕の右手が窓。

左手には二段ベット用のハシゴがありました。

上には妹が寝ています。

真夜中、特に何も感じず、ふと目を覚ましました。

相変わらず窓の外は強風。

初め、僕は窓側を向いていたのですが、どうやら足元の引き戸から誰か入ってきたらしく

木の擦れ合う音と誰かが通る畳の擦れる音が聞こえました。

何かがハシゴの隣で止まり、じっと佇んで僕を見下す。

人の気配はするし、視線も感じられた。

僕は即座に「あ、姉さんか母さんか」と思いました。

いつも僕に姑息ないたずらをする姉か、風の音をうるさく思った母だと思ったんです。

妹の寝息は聞こえるし、二階で寝ている父親のイビキも聞こえました。

でも、いつまで経っても動こうとしないので誰か確かめようと思い、寝返りを打ったんです。

ソレは確かに、いました。

ハシゴと二段目のベットの丁度間に仄かに反射する目が見える。

僕は向こうが仕掛けてきたらこっちが驚かしてやろうと思ってたんで、

薄ら目を開けて相手を待ち構えたんです。

ふと、不気味さが背を追いたてました。

何度も何度も寝返りを打って、精神的に絶えきれなくなって

叫んでやろうと窓を向いたその時、白い手がにゅっと伸びて窓と襖を閉めていったんです。

僕は「なんだ・・・。やっぱり風がうるさかったんだ」と思い、

安堵したのですが、ハッと気付いたらまた窓が開いていたんです。

確かに閉めたのに。

目は覚めていて恐いくらいです。

まだ背後には気配がある。

もう寝返りなんてできない程恐かったです。

そのうち、また物が通る畳の擦れた音と引き戸の閉まる音がしました。

そのあとは、寝たんだか気絶したんだか知らないうちに朝を迎えていました。


家族に聞いてみたところ、やっぱり誰も来てないそうです。

なんだったんだ、アレは。

今でも鮮明に甦るのは二つの目ぐらいでしょうか。

とにかく小学生にはツライ体験でした。


恐くないですね・・・。







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