あっちの世界ゾ〜ン第五十夜「ねぇ、聞こえた?」

天上天下私がのぶちゃんさん談




「燃えて(かるく酔って)いるぞ〜!!」

常々、楽しくハラを抱えて爆笑...いやいや、拝見させて頂いておりました。

はじめまして、夜の語り辺”のぶちゃん”です。

このたび、めでたく三十路をむかえ、

私もこちらの世界で遊ばせていただきたいと、稚拙な筆をとらせて頂きました。

今宵はそう、まだ私が北関東の片田舎にいた頃、

あのピチピチとしたグリーンボーイの頃の体験をお送りさせて頂きます。

当時私は、彼女の運転で深夜のドライブとしゃれこんでおりました。

私の故郷はよくある田舎町、ものの10分も走れば、狸さんや狐さんに

”わ・た・し・を・化かして〜〜!!”とお願いできる程の山、そして山。


カーステレオからながれでる曲に合わせたハミングも軽快に、

彼女は微笑みながら車をはしらせます。

「ねえ、向こうにいってみよう、」

彼女はさらに、そう...さらに国道から外れた山道へと向かいます。

峠にでもゆくのだろう、私が軽くこたえると、

彼女はニッコリとうなずき、人気のない道へとハンドルをきりました。

隣から聞こえる彼女のハミング...そう今、彼女はゴキゲン。

助手席の私をかけらも疑わず、深夜の山道を疾駆する流星と化しています。

そして私は、期待でいっぱい胸いっぱい。

まだ、キ◯しか経験のないチェリーなわたし。そう、ここは誰もいない深夜の山道。

”あんなこっといいな、でっきたらいいな、あんなことこんなこと...

勢いあまって、そっんなこっとー...キャーー!”

(ついに、「おとなの世界ゾーン」に突入かあ!!!)


そう、私の心は乱れに乱れ、いやがおうにも期待と不安は増すばかり。

手をのばせばそこに君が、胸はドキドキ高鳴って...ん?

胸は...ドキドキ...んん?.....ん〜胸騒ぎ。

そう、はじめてです、胸騒ぎ。みぞおちのあたりに、黒い泡がたつような不快感。

「ストップ!...Uターン!!」

突如告げる私を怪訝そうに見つめながらも、

彼女は車をとめて方向転換、もときた道を走り出しました。

彼女の問いかけにも、後で話すと答える私。気まずい沈黙。

”胸騒ぎがしたから、あのまま行ってはいけないと感じたから...”

なんていえません。

しばらくしてカーステレオも沈黙、テープリバースの曲間にはいったようす。

無音....無音.....無音...?...??


そのとき、”....う..う....うおおおお...........”との声


聞いちまった、聞いてしまった、後部座席からのうめき声。

そらみみか?いや、確かにきいた、いま確かに苦しそうな男のうめき声を。


”とぼけよう。”


そう、何かをひいたとか、道ばたに人が倒れていたとかではありません。

結構なスピードで走る車のなかで、しかも後部座席から、

あんなにはっきりと、恨めしそうにうめき声、やってくれます。

私は、多少経験ありです。

あとは、彼女さえ気付かなければとぼけるのがベター。

しかし、彼女はしばらく走りつづけてから、車をとめました。

そして、ぎこちなくふりむく蒼白の顔、


「ねえ、きこえた? きこえたよね!!」


しまった〜、お聞きになられてた。しかも、先にパニックっていらっしゃる。


その後、明るい国道沿いのコンビニ駐車場までゆき、

彼女をなだめるのに苦労したことはいうまでもありません。

そして、直前の胸騒ぎのことを告げると、彼女はさも納得とうなずき、おっしゃられました。


「野生動物ってさ、防衛本能つよいってゆうから、ねえ。」


ねえ、てあんた、自分の男つかまえて、野生動物って、私はいったい?


...そして、その夜は何事もなく、(ほんっとーに何っ事もなく)帰途についた二人でした。


スイートな夜をぶち壊してくれた向こうの方、ありがとう。

そして、私は誓うのだった、


 ”(野生動物だあ〜?)今度は野獣になったるわい!!”


                                            END







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