あっちの世界ゾ〜ン第五十七夜「躍る玩具のチャッチャッチャッ♪」

薩摩守さん談




初めまして、薩摩守です。

突然ですが、『おもちゃのちゃちゃちゃ』ってえらい恐い歌だと思いません?

夜ミンナが寝静まった後、玩具が躍ってる光景を目にしたら、大多数の人は気絶するでしょう?

今日は、そんなリアルな『おもちゃのちゃちゃちゃ』の話しを致します。


私の友人は調布の地主の息子です。

土地はだだっ広く、

敷地内には比較的新築の悪趣味な屋敷と、滅茶苦茶古い屋敷それに蔵が3つあります。

親と妹は新築の家に住んでいて、友人とお婆さん、そして弟が古い方に住んでます。

以前私が彼の家に泊りに行った時の話しです。


家に上がると、旧家ならではのカビクサイ匂いがしました。

電気も後から取り付けたらしく、家の構造に適合してません

ですから、明かりが行き届かない場所とかもあってなんとなく薄暗い状態です。

彼の部屋とお婆さんの部屋は丁度隣合わせになっています。

私が彼の部屋に入る瞬間『!!!!!!』

お婆さんの部屋が見え、中には無数のお人形の山。

とっさに私は『気持ち悪い!』と思いました。

市松人形からフランス人形まで、色々なジャンルの人形だったと思います。

私は友人に『お婆さん人形マニア?』と訪ねると

『ああ.......気持ち悪いだろ?』と答えました。


しばらくして(多分午後10時くらい)、

私が友人と酒を酌み交わしていると、おばあさんの部屋から声がしてきました。


『あらあら、貴女また虐められちゃったの?可哀相に、ビショビショじゃない?』


気が付くと外は雨になっていました。

『なあ、お婆さんは誰と話してるの?』と尋ねると友人は

『人形だよ.......俺もよくわからんけど、人形にも虐められやすい

やつがいて、服を破かれたり、棚から落とされたり、

外に投げられたりするらしい実際バラバラになった人形とかもいるから』

『おいおい.......やめてくれよ気味が悪い』

『いや、ホントかどうかは別として、お袋は気味悪がってバアチャンを

この家に移動させたんだよね、で親父はボケタと思ってて、俺と弟に監視させてるんだよ』

話しの真否はともかくとして、人形と話してるお婆さんの声は無気味でした。


それから2時間くらいして、我々は多少酔いが回ったせいか

隣の人形部屋(お婆さんの部屋)にGIジョーとかガンダムを送り込んで

応戦させろとか話してもりあがってました。

すると、お婆さんは突然腹話術を始めました。


お婆さん『お隣は五月蝿いですね』

『きらい!』

『あらあら、そんなこと言ったらだめです』(←お婆さんの裏声って感じでした)


『おいおい、お婆さん遠回しに俺等に文句言ってないか?』

私がそう言うと、友人はガンダムのプラモを取り出して

『ボク、ダブルゼータ!』と裏声でふざけ始めました。

隣では永遠とお婆さんの下手な腹話術が続きます。

だんだん私もおかしくなってきて、大爆笑していました(酒が入ってますから)

突然.......


『オイッッッッッッッ!!!』


男の声でした

友人は顔面蒼白になっています。

『お父さん?』

私は高校生が酒を飲んでいることに引け目を感じていたので一瞬焦りました。

『オヤジじゃない.......』

すると

『大きな声出さないの!』

『キライ』

『誰が?』

『キライ!!!』

驚いたことにお婆さんの腹話術はレベルアップしていました。

というよりむしろ、プロでもここまではできないだろうというレベル別人の声でした。

『マジ?』

『ヤバくない?』

『表でようぜ』

私達は旧家をあとにして、新館に入りました。


『なあ、お前のばあさんってプロ?』

『そんなわけねーだろ』

その夜は新館のリビングで眠り、朝始発で帰りました。

私の他にも、彼の家に泊りに行って、夜大勢の人の話し声で目が覚めた奴や

廊下で『ダメよダメよ』と言いながら、

廊下に散乱した人形を拾い集めるお婆さんを目撃したやつ、色々います。


いつか私の友人も、おもちゃのちゃちゃちゃな夜を迎えるのではないかと

密かに期待している今日この頃です。







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