深あっちの世界ゾ〜ン・第五十八夜「凶地」
響さん談
凶宅ですか。 嫌ですね、家に帰ってまで何かを警戒しなければいけないと言うのは。 そういう家そのものは存じませんが、 ここに立てたら間違いなく何かさわりがあるであろう地所が自宅の近辺にあります。 九州北部日本海側と言いますと、やたら鉱山関係の施設跡が多いものですが、 私の住む土地も例外でなく、広大な坑道内労働者向け社宅団地が市内に点在しておりました。 だいぶ前に鉱山が廃鉱になり、社宅も全て空き家になったのですが、 なんの理由があってか、相当長期間取り壊されずにそのまま放置され、腐るに任されて数年。 腐りかけの家は、かなりひどい匂いがします。 まして戦後すぐの建築で、後架が汲み取り式でしたから、大変な悪臭でした。 それに紛れて、気付かなかったんですよ。誰も。 家以外のものが一緒に腐っていることに。 先年、さすがに廃屋の撤去が始まりまして・・・・ 出るは出るは、片手に余る数の他殺体らしい白骨及びに腐乱死体。 捨て場にされていたんですね。 市街地にあって、なおかつ全く人目に付きませんから、確かに便利だったんでしょうが。 現在も別の施設が建設される様子もなく、社宅跡は空き地のままです・・・が、 たとえ格安のマンションが立ったとしても私はあそこには住みたくありません。 露骨に変なんですよ。 そこだけ街灯のランプの色が全部違って見えるのはまだしも、 空き地横のゲーセンの看板あたりは見事に風景がゆがんでいるし、 坑道内事故の犠牲者の慰霊碑と 社宅跡を結ぶ線を横切ろうとすると体に感じるぐらい抵抗があるし。 それでも何か建つんでしょうね・・・ 最近ぽつぽつマンションがこの辺でも建つようになりましたし。 こうやってあっちの世界をのぞく人が増えていくんでしょうね。 |
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