あっちの世界ゾ〜ン第三十壱夜「あれは夢?」

kumaZさん談


初めまして、kumaZと申します。

金縛りすら経験した事の無い私にとってはとても不思議な体験でした。

私の会社の倉庫(に使っているスペース)の片隅に、営業のMeguさんが部屋を作ってしまいました。

たまに虫さんが出没するのですが、私もよく仮眠室として使用しておりました。

もう一年位前の話になりますが。

夕方。激しい睡魔に襲われた私は、その部屋で仮眠をとっていました。

1・2時間が経ち、ふっと意識が戻りました。何故か瞼は閉じたままで。

パーティションの向こうからキーボードをたたく音とRさんと新入社員のKちゃんの話声が聞こえます。

疲れているんだろう。

そう思ってそのまま二人の話声を聞いていると、足元(入口)の方から声が聞こえてきました。

『くまぁ・・・  くまぁ・・・』

社内で私の事を『くま』と呼ぶのは上司のH氏だけです。あぁ、仕事の催促かな?

不思議と起きようという気がしなかった私は無視する事にしました。

『くまぁ・・・  くまぁ・・・』く、

私の頭の左側から聞こえます。

『くまぁ・・・  くまぁ・・・』

その時、この声はH氏の声とは違う様な気がしてきました。呼び方も変でしたし・・・

それに、其処には人が立つだけのスペースも無いはずなのに。

でも眠いから無視していました。と言うより、起きようという気が全くしなかったのです。

やがて声の主は私の左肩を揺すりました。あぁ、H氏が本当に起こそうとしている。

起きなくちゃ・・・と思っても、起きるどころか瞼を開けようという気すらしません。

もう一度、私は左肩を揺すられました。

頭の中では起きなくちゃ、と思っているのに瞼を開けようという気すらしません。

何か体がいう事を聞いてくれないなと思った刹那、

両手が私の胸の上を力一杯押さえつけてきました。

胸の上に乗せていた両手の上から押さえられました。

息が出来なくなり、慌ててがばっと起きた私は部屋の中に一人きりでした。

すぐに部屋を飛び出し、Rさんに先ほどの会話の内容を聞き、

夢ではなかった事を確認しました。

聞けば、H氏はまだ帰ってきていないようです。まさか・・・そう思って携帯に連絡を入れました。

『あぁ、もうすぐ帰れそうだけど・・・何かあった?』

いや、あなたの事はもはやどうでもいい。

あの時押さえつけてきた両手の感触が

まだ私の両手に残っている事がとにかく気持ち悪い・・・

もしかしたらあの時、体を動かそうとしても動かなかったのでは?

しまった!!

貴重な金縛り体験を逃したかもしれない。

でも瞼は開かなくって良かった。何か見えたら怖いから・・・

あれは夢だったんだ。きっと夢だったんだ。

そう決め付けた私は今でもたまにその仮眠室を利用しています。





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