あっちの世界ゾ〜ン第四十八夜「今度は、あっちの話。〜祖父の体験〜」

としやんさん談


お久しぶりです。としやんです。

ここで、あっちの世界の話を投稿するのは、はじめてです。(今までなにやっとったんやおのれは)

とにかく、友人から、自殺者の霊除霊されました記念で、3つほど、あっちの世界を語りたいと思います。


まずは、自分のじいさんの話から。


以前、大騒ぎになったあっちの世界の事件をご存知でしょうか。

タクシーに若い女が乗り込み、突如として消えてしまう・・・。そう、新聞にも載った、あの事件です。

実は、私の祖父は、あの事件の20年も前に、同じような体験をしています。

祖父は、当時、長崎の某市の隣の某群(以後R郡)に住んでいました。

某市(以後S市)で宴会に参加した当時45歳の祖父は、終電もなく、タクシーで帰る事にしたのです。

「お客さん、どこまでですか」

「R群の○○まで。」

「はい、わかりました」

しばらく運転士とのたわいない世間話が続いた後、

タクシーの運転手はある噂を思い出し、後部座席の祖父を見て、こう言ったそうです。

「もしかして、M峠を通るんですか?」

祖父は首を傾げて「そうですよ」(それより前を見て運転してくれ)

運転手の顔がにわかに陰り、しばらく、

無言で運転していたそうですが、そう言われりゃ、祖父も気になります。

「M峠が、どうかしたんですか?」

「・・・M峠はね、最近出るらしいんですよ。」

「出る?」

「はい、女の霊が。」

「はあ?」

「乗ってくるらしいんですよ、タクシーに。」

「見たんですか?」

「いや、自分はほとんど市内の営業だったから、通るのもはじめてなんですが、

他の同業者が、見たって言うんですよ。」

「まさか。」

「本当ですよ。あんまり噂がたって、客を逃がすのが恐いのか、

たいてい黙っているみたいですけど、本当らしいですよ。」

「冗談でしょう。」

「乗るんですよ。後部座席に」

後部座席に座っていた祖父は、少しゾッとしましたが、

出るなら見てやろうじゃないかと思い立ち、次の信号で一旦止まるように運転手に言ったそうです。

「お客さん、何をするんですか。」

「いや、出ると言うなら見てやろうと思ってね。」

女の幽霊がM峠で後部座席に乗り込んでくると聞いた祖父は、

信号でタクシーを止め、補助席に乗りかえました。(本当は隣に座られると恐いので)

「お客さん?」

「出ると言うなら、見てやろうじゃないですか。さあ、行って下さい。」

「はあ。」

もう、二人は無言です。ここまで真剣で一体感のある、タクシーの運転手と客が、他にいるでしょうか?

・・・・

・・・・

・・・・

タクシーは峠に向けて、ぐんぐん山を登ります。

一向に女が乗ってくる気配はありません。

とうとうタクシーが峠付近に来て、「M峠」というバス停を通り越した時でした。

・・・・

・・・・

「お客さん。」

「・・・?」(←なんだよ。なにも来ないジャンと思っていた)

「来てますよ」

「・・・!」

運転手が、バックミラーに手をかけて、どうぞという感じで動かしてきたので、

祖父が、後部座席にバックミラーをあわせると、 ・・・乗っていた!・・・そうです。

前の座席の二人の会話が聞こえていないのか、うつむき加減にその女は座っていたそうです。

長い髪の女が、先ほどまで祖父が座っていた位置に。

(鏡に何か細工がしてあるのかも)

と思って、うつむいてちらっと後ろを見たら、女のスカートが見えたそうです。

とにかく、本物を後ろに乗せたタクシーは、そのまま無言で、山を下りました。

道も平坦に戻り、山を下りきった頃、女は消えていたそうです。


当時そのM峠では、自殺か他殺かわからない、女の腐乱死体が発見されていて、

祖父は、「家に帰りたかったんじゃないかな」と言っていました。

その運転手さんは、その峠を通って市内に帰るのが恐かった為、

わざわざ、一旦他の県まで出て、滅茶苦茶遠回りして帰ったそうです。

まあ、その祖父も4年前に他界して「あっちの世界ゾーン」の住人になったんですが・・・。





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