あっちの世界ゾ〜ン第五十五夜「おいらん淵」

J・頭田さん談


そう、あれはかれこれ10年になりますか。

うちの高校は私服・土足・免許OK、とゆー夢のような学校でした(やば年バレ)。

当時中免取りたてのおいらは、それはもう毎日が楽しかった。

その日も学校で単車の話で盛り上がり、今夜峠に行こうっつー事になったのもごくあたりまえの話です。


奥多摩在住の原島(走り屋:マジっ速)は言いました。

「今日は土曜で走り屋も多いと思う。どーせなら家の近所の恐い所行って、その後飲もう!」

(そう、言い出したのは奴だった)


おっかないところに行くと聞いたおいらは、「自分のバイクに幽霊が憑いて来たら嫌だ」

とゆーもっともな理由で自分のRZRRでなく兄貴のCBR400Fを借りていきました。

(兄貴今まで黙っててごめん)


夜の11:30頃、奥多摩湖に集合したメンバーは5人。

そして目的地は

「おいらん淵」

知ってる方は多いと思いますし、長くなるので説明はまた今度。


当時のおいらはおいらん淵なんて聞いた事もなく、ただ

「うぉぉ!なんで原島あのスピードで曲がれんだよ!うぉ!江守すげー!膝から火花出てるよ!」

と、後ろをトロトロ着いてきました。

初めて見るおいらん淵は異様でした。

でっかい碑があって、花や供物が大量にあって・・・。

夏の蒸し暑い夜でしたが、山の上という事もあってかひんやりした空気。

横にあるおいらん淵の解説を読み、マジで寒気がしました。

罰当たりなおいら達は写真を撮る事に。

「心霊写真は、カメラを取る人に能力があると写る」

という話を聞いた事があったので、セルフタイマーで取る事にしました。

一番車高が高い、という理由でCBRのタンクの上において「ぱしゃっ」。

すると右手の真っ暗な山の上の方でガサガサ音が。

その瞬間皆の頭に浮かんだのは

「熊?」

という単語でした(マジ)。


奥多摩には熊が出ます。月の輪ってー奴です。

「熊に注意」の看板もあります。

ちなみに熊は成獣でも思ったより小さいそうです。おっきい犬ぐらいだとか。

それはさておき。

「食われたらシャレにならんでしょー」とゆー事で、(そう、すごく和やかな雰囲気だったんす)

原島の家に行って飲む事にしました。

前述の通り原島は走り屋です。

膝にはジュースの空缶つぶしてガムテープで巻いてます。

しかも走りなれてる道。おいらは原島の後ろを走ってました。

後15分くらいで原島の家。右コーナー。膝を擦りながら原島は曲がっていきます。

スーっという感じでどんどんインに寄っていって・・・。


ガチャン!


転がる原島。ねずみ花火のように火花を飛ばしてすっ飛んでく原島のVγ。

ほんとにスローモーションに見えるんですねぇ(しみじみ)。


どーしたー、だいじょぶかー・・・

ま、御想像通りの大騒ぎ。原島は右膝を抱えて

「ぐー・・・っはぁ!・・・んくー・・・」とかそんな事しか言いません。

どんどんあふれる血、あとなんか黄色いぐちゅぐちゅしたやつ。

「やべやべ、きゅーきゅー車!!!」

・・・なかなか来ないもんなんですね、救急車って。

「右膝骸骨複雑骨折」。

原因はセンターラインのキャッツアイ(鉄製の光るやつ)に右膝をぶつけたそうで。

その日はお開き。翌日学校では原島の話で大盛り上がり。


そんな訳で、原島が入院してしばらく経ち、お見舞いに行こうっつー事になりました。

当然写真も現像してね。


ところが、おいらん淵で取った1枚だけの写真が妙なんです。

5人の集合写真。周りに雪のような小さな白い点がいっぱい。

雪?だって夏だよ?

あと画面の端、CBRのミラーに青い煙のようなものが写ってる。

ストロボにしてはぼやけ過ぎだし・・・。

「こりゃ心霊写真だろ」

「つー事は何?CBRには霊能力があんの?」

「いや、それよりCBRに憑いちゃったんじゃない?」

妙な興奮状態で原島の見舞いに行きました。

奴は何かを見て事故ったに違いない、と。


原島はムチャクチャ元気で、

「車椅子でウイリー」という荒業をマスターしていました。

事故の事を聞くと

「キューってブレーキして、ガッ!て寝かしたらクリッ!て感じで真ん中に寄り過ぎた。

・・・幽霊?全然。ただの自爆。」

と擬音語だらけの会話で頭の悪さをアピールしてくれました。

(なんでおいらの周りの単車乗りってこーゆーやつばっかなんだろ?)

で、その写真は誰も欲しがらないし、おいらが持ってたんですけどどこにいったんだろ?


ちなみに兄貴にはずっと内緒にしてました。

も、まだ生きてるし赤ん坊も生まれて幸せに暮らしてるようだからあのCBRは大丈夫だったんでしょう。

一時は兄貴も事故るんじゃないかと思ってビビってたけど。





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