あっちの世界ゾ〜ン第六十弐夜「約束」

生き人形さん談


あまり恐い話ではないんですが一つ。

僕の両親が友達のS君の母親から聞いた話です。


夜になり、S君の両親はいつも通り布団に入り眠りに就きました。

深夜、物音がするので S君の母親は目を覚ますと、横にいる夫がなにか言っています。

時計を見ると、二時を少し回っていたそうです。

こんな時間に夫は何をしているんだろうと思い、目が段々なれて来て、

夫をよく見てみると、夫は正座をし、手を合わせながら頭を下げている光景。

そしてしきりに「かあちゃん!たのむよ、あと一年、

あと一年だけ待ってくれ!お願いします!お願いします!」

S君の母親はビックリして、夫を揺すると、まるで何事もなかったように

「なんだ?」と言って、また寝てしまったそうです。

次の日、その事を話してみると、

「寝ぼけてたんだろ、きっと。」と、本当に覚えていなかったそうです。

それからS君の家は新築し、

やっと新しい家に住み出した矢先に、S君の父親は亡くなりました。

まだ元気だったS君のお父さんの突然の死、

病院に行く事も無かったので、警察の方に検死に廻されたそうです。

それから少し経ってから、S君の母親が、

「こんな事が死ぬ一年前にあったのよ。」と、僕の母に話してくれたそうです。





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