あっちの世界ゾーン第十四夜「2段ベッド」

さんぺー さん談




みなさん。はじめましてさんぺーです。

これから私の友人Y君の結婚を記念して、

彼の体験した「あっちの世界ゾーン」についてお話します。


今から十数年前。

某県の某水産高校の遠洋航海に出たときの事件に起因します。

全国ニュースで放映されたかどうかは知りませんが、

1人の生徒が他の2人の生徒に無理矢理海に突き落とされ、

落ちた生徒が行方不明になった事件がありました。

それから数年の後、Y君が「あっちの世界ゾーン」を体験することになるのです。


Y君の学校の寮は2段ベッドになっており、

1年、2年と彼は2段ベッドの下の方に寝ていました。

ちょうど春休みに入り、3年生は卒業して4月からは新入生が入ってくるため、

寮では部屋替えが進んでいました。

2年で寮長をしていた彼は寮の管理者にあるお願いをしに行きました。

今年も彼は下のベッドを使うことになってしまっていたため、

使っていない部屋があったので、

そこを借りれないかどうか確認に行ったのです。

管理の方は「いいよ」との返事。

「試しに言ってみるもんだなぁ」とよろこんで引越しをはじめました。

そこが「あっちの世界ゾーン」だとも知らずに・・・・。


引越しも終わり、夕食をとり、風呂にも入ってもう夜遅くなっていました。

「さて、寝るか」

彼は楽しみにしていた、上のベッドに眠ったのです。

何時間たったころでしょう。

「う・・・」

「か・金縛りだ・・・」

体力には自信のある彼が微動だにできない。(ちなみに柔道2段)

どうしよう・・・そう考えている間に金縛りが解けた。

「あぁ、そうか。引越しで体が疲れてるんだ」

自分を納得させてまた眠りにつくY君。

ところが数分おき、または数十分おきに襲ってくる金縛り。

「何だぁ。いったい俺がいったい何をしたんだ」

意識が遠くなる・・・。


気がつくと朝だった。

彼は走った。

もちろん管理者の部屋に。

「あの部屋は何だ!」

どなるY君。

おびえる管理者。

「やっぱり・・・」

「やっぱり?知っていてだまってたんかい!」

その後の管理者の話を聞いて、また引越しをし直しました。

彼が寝ていたベッドは冒頭にお話した事件の突き落としたうちの1人が

使用していたベッドだそうです。


それから数年たち、Y君もまもなく結婚することになりました。

友人代表のスピーチは私です。


それが彼にとっての「あっちの世界ゾーン」にならなければ良いのですが・・・