あっちの世界ゾーン第弐夜「交差点」

Mr・タナカ氏談



私の友人が体験した話です。


7月の土曜日の夜10時頃、彼は新宿アルタ前の壁にもたれて

酔いをさましていました。
 
今日彼は会社の後輩達と酒を飲んでいたのです。

後輩達は次の店に行ったらしいのですが、彼は何故か一緒に

行く気が起こらず壁にもたれて休んでいました。

アルタ前の交差点には人が溢れていました。

そんな人達をぼっと見つめていたのですが気になることが有りました。

小さな6才ぐらいの女の子が、交差点を行ったりきたりしているのです。

こんな夜遅くどうしたんだろう。

迷子にでもなったのだろうか?

赤い靴を履いた小さな女の子は、ほろ酔い加減で歩いている

人達の後ろを付いていって、交差点を行ったりきたりしています。

彼は絶対迷子だと思い、その女の子の方に行きました。

女の子は、よっぽらった男の服の裾を掴みながら
 
交差点をわたってきました。

わたった所で立ち止まりキョロキョロしています。

彼は女の子の前に行き、覗き込むように話しかけました。

「どうしたの?迷子にでもなったの?」

女の子は、一瞬驚いた顔をしました。

そして、愛くるしく笑い顔を作り。

「・・・・・・おまえ見えるんか!」

嗄れた男の声で喋りました。

そして、女の子は煙のように消えたそうです。




今でもアルタの交差点には、

誰にも気づかれず、その赤い靴の女の子はいるのでしょうか?