あっちの世界ゾーン第参壱夜「タッチー」

みゅんさん談


さいこおおおおおだあああああああああああ、と

いつも楽しくあなたの元祖シリーズを読ませていただいており、

私の体験談でもお役に立てれば、と思いメールを書いております。

いきなりの御無礼をお許し下さい。


さて、今回投書させていただく内容と致しましては、


俺はゼビン星人なんだああああああああ、と


言いたいところなのですが、純粋に、

知り会いの、あっちの世界体験をお話したいと思います。

尚、載せていただけるのでしたら、タイトルは、タッチー、でお願い致します。

ハンドルネームは、みゅんでお願い致します。

早速ですが、内容に入ります。

尚、この話は一字一句ではありませんが、

「実話」です。



私には、莫逆の友がおります。

彼の名はSちゃん。とおってもガタイが大きく単純で、

且つ恐いくらい霊感の無いやつです。

しかし、一転、お化けの話になると、知ったか度400パーセントで

我先にと話し出し、皆様を恐怖のどん底に陥れはするのですが、

如何せんあっちの世界の存在などをまるで信じていないがために、

本人はいたってすまし顔で、そんな話で盛り上がった夜などに、

平気で病院の夜勤などに繰り出せるという何とも逞しい方です。

何でもそんな時ほど懐中電灯などを持ち歩かず、

病院内を点検するので、よく幽霊と間違えられ、

それが面白いとのたまう恐れ知らず、です。


内容とはあまり関係ないのですが、そんなSちゃんは病院内で、

荷物(つまりは死体など)運搬専用のエレベータが、誰もいるはずの

無い深夜に動いていた事を何度か目撃した事があるそうです。


そんなときSちゃんは、誰もいない真っ暗な食堂から手探りで見つけた

味噌汁などを盗み飲みしながら、そんな事実を真っ向から

「いや、本当は目の錯覚で、動いてはいないんだ」

と心の底から誤解できると言う、とても衛生的な方です。


そんな彼には、私が紹介した彼女の、Mchがいます。

彼女はというと、彼女こそあっちの世界の体現者、

生まれながらのあっちの世界アイドル、です。


彼女は、Sちゃんに出会う前は、それはそれはピュアなお方でした。

どこから嗅ぎ付けるのか、あっちの世界の匂いを、驚くべき速さで嗅ぎ分け、

ブワッと涙を流しながら、その存在をアピールしてくれたものでした。


しかし、最近ではどんなに霊的な接触が彼女の身に起こっても、

Sちゃんと付き合った事によって、それは根絶やしにされるかのよに、

彼女も大分そういう現象を漫談として捉えられるようになったのでした。


「あんなに素直でいい子だったのに・・・・・・・


これは、Sちゃんの御住いがある祖師谷でのお話です。


彼の御住いは玄関を開けた途端に、途中何の扉も壁も無く、リビングがあり、

そしてキッチン、そして窓があると言う、いわゆる霊が通りやすいといわれる

作りになっており、Mchは前々から気持ちが悪い、と鼻水を垂らしながら

大騒ぎしていたのでした。


そんなある日の事でした。

いつものように燃え上がるような夜を過ごした二人は、

(うらやましいぞ、このやろー)

一糸まとわぬ姿で眠りに就いていたのでした。

ふと、Mchは、何の脈絡も無く目が覚めたと言います。

そして暫くじっと目を開けていると、ぼんやりと窓のすぐ下に、

くろーい靄みたいなものがあるのを認めました。


「ああ、また、一つ漫談のネタが増えたわね。」


開口一番Mchはそう思ったそうです。

暫くすると、その黒い靄は、一人の男の人になったそうです。

ちょうど彼等と同世代ぐらいの若者でした。

そして、Mchの方をじっと見ていたそうですが、

どうも様子が違うそうです。


意外なほどまでの行儀のよさ。

正座をしている。


その目は、とても透き通った正直な目をしておったそうな。

そして、彼はぼそぼそとお話をし始めたそうです。


「僕の名前はタチバナ ○○です。

(個人名ですので、そして多分不正確ですので、この辺の記述は

いたこ様に御任せします。)

ここの窓の向こう側にあるお墓からちょっと来ました。」


実際窓を隔てて向こう側にはでかいお墓があります。


Mchには、こういう事は珍しい事ではなく、どうしたものか、と思案に暮れて

いたそうですが、とりあえず、話を聞いてみようと思ったのでした。

タチバナくんは、その後も何事かを、ぶつぶつと話していたそうですが、

いきなり大声で、


「実は僕!!!!」


と言ったかと思うと、


「よく、この部屋に遊びに来ているんです。」


と言ったそうです。


びっくりしたMchは、ここで常軌を逸した返答を返します。

「え!!!??ここにはこないほうがいいよ。

だって、Sちゃん、全く気付かないから。」

・・・・・・タチバナくんは、すると、おもむろに、

「そう・・・・・それがいいたかったんだよ。何回も彼は僕の存在に気がついた

臭かったんだけど、実は気がついたふりをしていただけだったんだ。」

「すごく寂しいから、何とか僕の存在を気付かせてあげたかったんだけど、

彼じゃ埒があかないから、君が一緒の時に現れれば、君が彼に僕の事を

知らせてくれるでしょ。」

あまりに不憫に思ったMchは

「分かった、明日Sちゃんが起きたら知らせておいてあげるね。」

と言うとタチバナ君は、

「ありがとう・・・・・・・


でも、君ともう少しお話がしたいな。」


と言って勝手にお話を続けたそうです。


うぜえ


と思った彼女は、念仏のような彼の独り言を子守り歌にしながら、

ゆっくりと深い眠りに落ちていく自分を認識していたそうです。


朝。

昨日の夜の不憫なお話を彼女はSちゃんに打ち明けました。

Sちゃんはうつむきながら、一通りその話を聞いた後、

ゆっくりと、


「俺は、その幽霊の事は知っていたよ。」


と言ったそうです。

しかし、無論何の霊感も持たないSちゃんのこの一言は

ただの狂言であり、その反応をなまじ予知していたMchは


「ああ、やっぱり漫談ネタが一つ増えただけか・・・・・・」


と思ったのでした。


そして、この不憫なお方は、彼等が私に話した事によって

私に「タッチー」と名づけられ、内輪では次回の登場が熱望されている

あっちの世界指折りの人気者となっております。


                                  ・・・・・・・・・つづく



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