新・あっちの世界ゾーン・第七十夜「全国行脚」
命知らずさん談
| やっと就職活動から帰ってきた命知らずです。 内定まだもらっていない。 結構重い話題になっていますね。 考えてみれば、こっちの世界でもあっちの世界でも、恨みつらみは人間に起因していますから。 たとえ気がつかなくても、境界線を一歩越えてしまうのは簡単なことで、 取り返しのつかないことなのですよね。 その現実に肌で触れたはずでも、数年経てば感覚を忘れてしまう。 そんなじぶんがコワイです。 で、重い話は苦手なので、軽い話を一つ。 私が通っている大学のまわりにはなぜかお墓がたくさんあります。 十六方位、全てをお墓に囲まれていて、悪の結界でもはられているかのよう。 当然、大学の周りのアパートも囲まれています。 中には、「おふだ」がはってあるアパートも……実は結構ある(^^)。 いや、笑い事ではないな。 そんなアパートにまつわる話もあるのですが、これは大学構内で起きた話です。 工学部では、結構有名な話らしい。 その日、とある仲良し二人組み(仮にAさん・Bさんとします)は、集中講義に出るため構内をあるいていました。 すでに大学は夏季休業に入っていて、しかも時間は午前八時。人気がありません。 のんびり話しながらあるいていると、Bさんは前からお坊さんが歩いて来るのに気がつきました。 時代劇によくいる虚無僧の格好をした、頭に編み笠をかぶっているお坊さんです。 笠で顔は見えませんが、足袋を履いて、手には錫杖をもっていました。 ものすごい違和感を感じ、笑いたくなったのですが、本人の目の前でそんなことをするわけにはいかない。 Bさんは、お坊さんがすれ違って見えなくなるのをまって、Aさんに話しかけました。 「いまの坊さんおかしかったよなあ」と。 しかし、Aさんは話についてこない。訳のわからないような顔をしています。 「坊さんだって、虚無僧みたいな格好した」 しかし、Aさんはやはり話についてこない。 どうやら、そのお坊さんはAさんには見えていなかったらしいのです。 AさんもBさんも、互いに相手がふざけている。自分を怖がらせようとしている。 そう考えて、その時はあまり気にしませんでした。 ところが…… 翌日の朝、Bさんはまたお坊さんを見ました。 今度は二人。 ともに同じ格好をして、向こうからBさんにむかって歩いて来ます。 そして、すれちがいました。 しかし、やはりAさんには見えていないのです。 さすがにおかしいと感じたBさんは教室につくと、そのことを他の人にも話しました。 「それって編み笠かぶってるやつだろ?」 驚いたことに、他にもニ・三人、Bさんとまったく同じ体験をしている人がいました。 やはり見間違いではない。しかし、ただ見えるだけで何かしてくるわけではない。 そう思って、みなお坊さんを無視することにしました。 それから、「見える人」は毎日のようにお坊さんを見るようになりました。 お坊さんは見るたびにその数を増やして行きます。 三人・・・五人・・・八人… そして、人数が増えるにつれ、Bさん達の体調もだんだんとおかしくなり始めました。 はじめは身体がだるい程度だったのが、食欲がなくなり熱が出て…ついに、 立ちあがることすらきつくなりました。 お坊さんの数は、すでに何十人にもなっていて、道を埋め尽くして見えたそうです。 心配する周りの勧めで、Bさんはお寺で見てもらうことにしました。 お寺の住職は、Bさんを一目見るなり血相を変えて言いました(なんの説明もしていないのに)。 「たいへんです、あなたの後ろにたくさんの霊が見えます。 このままでは、彼らと一緒に日本中を歩かなければならなくなりますよ」 もう一刻の猶予もないというので、他の見える人達も集めて、その場で除霊をはじめました。 結界をひいた中から一歩も出ずに三日三晩。 飲まず食わずで除霊を続け、除霊し終わった瞬間、住職もBさん達も意識を失って倒れたそうです。 そのあとの話しは聞いていませんが、はたしてお坊さん達は成仏できたのでしょうか。 Bさんたちは助かったそうですが。 多分今でも新しい仲間を探して、日本中を行脚しているのでしょう。 でも三日も食わないでいれば、そりゃ倒れますわな。下手すりゃそれが原因で死んでたかも。 機会がありましたら、次は去年の夏の話し。私の後輩のH君の体験した話しをしようとおもいます。 アパートの話しもそのうちに…こっちとあっちの両方を。 |
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