あっちの世界ゾーン第七十九夜「T陸上自衛隊基地 その二」

奥村紀子(真名)さん談


T陸上自衛隊基地(以後T自衛隊)は、まだまだいわくあります。

ちょっと、そこら辺の話をしましょうか。

さて、前回出てきた資料館の話でもしましょう。


大学合格してすぐに、私は兄克也の仕事場に行きました。

結構喜ばれ、なにを思ったのか、お祝いがわりに資料館を見せてくれるということです。

まあ、怖い物見たさで、前回、頷いてしまった私を見て、どうやら「とっても見たい」と感じたみたいだ。

なんて妹想いな兄だ。

妹の合格祝いに「あっちの世界」をプレゼントするなんて。

笑ってはいたが、内心、余計なことをー、と思っていました。

相も変わらず、資料館は物々しく、なにか出ます、て感じでした。

中に入ると、戦争時代に使っていた物がいっぱいありました。

その中で、マネキンが防災服を着ているのが目につきました。

はっきりいって、あまり気分のいいものではありません。

何年もそこに置かれているはずなのに、とても綺麗なのです。

しかも、異常に表情が生き生きしている。

私の前ではなんの怪事も起きませんでしたが、このマネキン、動いたりするそうです。

資料館を一回りして、外に出ると、急に暖かくなりました。

というより、資料館の中が寒すぎたのです。

もっと暖かい場所に行ってから、兄があの資料館のいわくありげな話をしました。

資料館には必ず管理人がいるそうですが、近年では、

なりたがる人がいないので、鍵をしめっぱなしにしているそうです。

なぜか。

夜になると、管理人を悩ます怪事の連続。

そして、管理人の不幸な死。

管理人になった人は、だいたい3年で死ぬそうです。

あと、資料館から、古いお金を持ち出した人は不幸の応酬に出逢ったとか。

本当に困った資料館である。


あれ以来、資料館には足を踏み入れていない。

兄は相変わらず「あっちの世界」と交信して、T自衛隊の秩序を整えているようだ。

前より、ぞっとする感じはなくなった。

しかし、兄よ、もうそろそろ「こっちの世界」の空気でも吸った方がいいのではないか。

本当に、「あっちの世界」の住人になってしまうぞ。

おしまい





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