あっちの世界ゾーン第八十夜「兄のお土産」

奥村紀子(真名)さん談


ある日、兄克也君がおかしなお土産を持ってきた。

普段は、ゲームの景品がほとんどなのだが、その日にかぎって、古びた箱一つだけだった。

紙で出来た箱は、埃はついていないから、保管はよかったみたいだ。

中を見ると、着せ替え式の人形が入っていた。

日本人形版バービーみたいだ。

しかも、この人形を作るための、専門学校まであったみたいだ。

なんて物を持ってきたのだろう。

「これ、どこで貰ってきたの?」

いやな予感がしたので、出所を聞いてみると、克也くんは、

「資料館でいらなくなったから、ていわれたから貰ってきた」

忘れていた、克也くんは「あっちの世界」を慣れ親しんでいることを・・・・

話を聞いてみると、こうだ。

最初は正式な持ち主がいたそうだが、それを持っていると不幸が続いたそうだ。

そこで、不幸には不幸を、と資料館に勝手に置いてしまったそうだ。

ちなにみ、置いたのは管理人で、怖くなったのか、すぐにやめてしまわれたそうだ。

なんて無責任な奴だ。

それが、T自衛隊でも有名な「あっちの世界」の住人見習いである克也くんが

貰っていくことになってしまった。

克也くんは慣れている上、あの資料館にあったんだから、

この物には、もうなにもついていない、ということだった。

それに、我が家の神様と悪霊が戦って、悪霊が負けるのは必至とか。

しかし、兄が持ってくるものは、だいたい私に回ってくると決まっていた。

前の持ち主は事故にあうことが多かったとか。

ふふふ、いつか私もくだらん事故で大怪我するんだろうな。

なんて思っていた。

それから1ヶ月たって、人形のことなんてスカーンと忘れてしまった頃、

本当にくだらん事故にあってしまった。

そのお陰で、かなり単位が危うかった。


その人形、今でも家にあるが、すっかり埃をかぶってしまい、見る影もない。

いつか、「なんでも鑑定団」に出して、物好きな人に売りつけてやろう、と思っている。

兄よ、お願いだから、「あっちの世界」の住人を連れてこないでくれ。

なぜか、全て私にまわってくるのだから。

おしまい





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