新・あっちの世界ゾーン・第八十弐夜「奇妙な写真」
坂田(仮名)さん談
| 私は、仕事柄、よく写真を写します。 学校でそういう勉強をした、とか、デザイン関係の仕事をしている、というわけではないのですが、 屋外での仕事の場合、対象物の位置関係を把握しておくために、写真を写すのです。 1つのプロジェクトで写す写真は膨大な数になることもしばしばです。 ほとんど写さないプロジェクトももちろんあります。 この話は、私と後輩のNが一緒に関わったプロジェクトでの本当にあった話です。 実は、過去の話ではなく、現在進行中の話なのです。 そのプロジェクトでは、主に私が事務所に残って各種連絡、デスクワーク等を担当し、 Nが屋外に出て写真を写してくる、というルーティーンで進めていくことになりました。 日中Nが屋外で写真を写し、日が暮れて、もどってきたNから、現像された写真を見せてもらい、 報告を受けるというかたちで仕事は進めていきます。 ところが、Nの写してきた写真がどうも妙なのです。 全ての写真が、というわけではないのですが、 5枚に1枚くらいの割合で写真に何か変なものが写っているんです。 その変なものというのが、何というか、人間の体の一部のようなそうでないような、 ただ肉色をしていて、奇妙としか言いようのないものなのです。 私は商売柄、写真を沢山見る機会に恵まれています。 出来れば、見なければよかった、という写真も目にすることしばしばです。 長年の経験から、私はピンときました。 私はNに問いただしました。これは一体何だ、と。 ところが、Nはただ、すいませんすいません、を連発するだけで本人も、 なんだかよくわからないようでした。 私は気をつけるように注意しましたが、果たして気をつけてなんとかなるものなのかどうか、 自分で言っておきながらはなはだ疑問でした。 まあ、その変な写真は、たまたまその日だけだろう、と思い、 私は余り気にせず、仕事に没頭しました。 ところが、Nが写してくる写真には、毎日毎日、大体5枚に1枚くらいの割合で、 変なものが写っているのです。 そういう写真を写してくるNになにか問題があるのではないか、 と私は最初の日に思ったのですが、大丈夫だろう、とタカをくくってもいました。 ところが、これが4日くらい続くと、さすがの私も思うところがあります。 ちなみに、私はそのような写真は写したことがありません。 そういえば、Nはなんとなく影がうすく、人間嫌いのような感じの人物で、普段何を 考えているのか、よくわからない、見る人が見れば不気味ととらわれてもいたしかたない男です。 人間嫌いでも、人間でないもの(?)に好かれそうな雰囲気をただよわせています。 Nが写した変な写真には、中には、 全体の半分近くを変なものが占めていたりするものがあります。 さすがに、そのような写真はお客様には見せませんでしたが、バレなきゃいいや、 という気持ちもあり、少しくらい写っているものはお客様に見せました。 その場では、そのことに言及されませんでしたが、お客様は本当に気付かなかったのか、 あるいは見て見ぬふりをしていたのかわかりません。 ただ、その写真がないとプロジェクトが進行していかなかったのも事実です。 私はNにそういう写真を写さない方法を教えました。 それは、どういうことか、というと、シャッターを押す時に頭の中で1つの意識を集中して、 雑念を払えば、変なものは写らない、というバカみたいな方法です。 Nは、気をつけてみます、と言いました。 これで、また変なものが写ってしまったら、Nは一生カメラには触れない方が 本人のためにはいいだろう、とまで私は思いました。 さて、翌日、私が言った通りの方法で写真を写してみると、 ウソのように1枚も変なものは写っていませんでした。 それ以降、Nはそういう写真は写さなくなりました。 以上でこの話は終わりです。 さて、変なものの正体とは一体何だったのでしょうか? それは、まぎれもない、Nの指だったのです。 バカチョンカメラのレンズの部分をNは指で隠していたのです。 ご存知だとは思いますが、バカチョンカメラのファインダーはレンズと少し離れていて、 自分の指でレンズを隠していても、ファインダーには指は入っていません。 つまり、Nは写真撮影が下手クソだったのです。 Nよ、写真の写し方くらい、1度失敗したら、学習してくれ!!! |
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