あっちの世界ゾーン第八十参夜「あっちの世界の声<前編><後編>」

奥村紀子(真名)さん談


●あっちの世界の声<前編>



今日もあんまし寝てないぞ。

おお、英語の訳が・・・全然できていない。

あと二週間でできるのか、論文発表!

最近、「あっちの世界ゾーン」の住人見習いになりつつある奥村です。

「女を憎む者」で、謎の声が登場しましたよね。

覚えている人はいるかな?

この声、未だに謎です。

ことあるごとに私に聞こえるのですが、正体がつかめていません。

とりあえず、この「あっちの世界の声」について話してみます。


呪われた着せ替え人形を手にしてから一ヶ月。

私も結構、油断してきました。

一ヶ月も音沙汰がないと、気がゆるむみたいです。

その頃、家から大学まで自転車で通っていました。

ちなにみ、1時間かかります。

寝ながらでも自転車をこげるという技術を持っているがために、疲れることなく、毎日学校に行っていました。

そんなある日のことでした。

コンタクトがうまくつけれず、けど、無理矢理つけて学校に行きました。

その通学間のことです。

いつも朝早く出ていくので、少し遅くても時間に余裕があります。

まあ、大丈夫かな、いつものモードで自転車をこいでいました。

あと10分で学校という所にさしかかりました。

「あぶない! 止まれ!」

私の耳元で声がしました。

しかも、かなり緊迫しています。

止まろうとしても、気付いた時には遅かった。

自転車も、急には止まれない。

見渡しの悪い場所でした。

道の角の上、家の壁なんかがあって、左から誰が来てもわかんないんですよね。

だから、自転車が猛スピードでやってきてもわかんないんですよ。

まさに、猛スピードでやってきた高校生が乗った自転車は、私の自転車の前輪に激突!

私は地面に叩きつけられ、

意識が「あっちの世界」に遠のいていきました。
      

つづく

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●ちょっとやってみました。



一話完結、というのが多いので、続けてみました。

やってみたかったんですよね。

さて、あっちの世界の声って、一体何者なんでしょうか。

こうなんじゃないか、という意見があったら教えてください。


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●あっちの世界の声<後編>



ごきっという音を聞いた覚えはあります。

そして、頭に鈍い衝撃が。

そうして、意識を飛ばしてしまいました。

このまま眠ってしまおう、と思いました。

ところが、それを許さないあっちの世界の声!

「起きろ、起きないとヤバイぞ」

なにがヤバイのかわかりません。

ただ、そういわれて、私は必死に意識を戻そうとします。

しかし、体は傷を負っているため、無理矢理休ませようと働かせるのです。

起きられない。

「おーきーろー!」

啖呵をきったみたいだ。

声だけでなく、頭にも鈍い衝撃が起こった。

それから、現実に引き戻された。

頭が痛かった。

割れるかと思って、もう一度意識を手放そうとするが、

「ダメだ、起きてないといけない」

そういって、声は私を起こします。

やっと目を覚ますと、自転車は彼方に、ぶつかってきた高校生は、まだ横断歩道にいました。

あれから、そんなに時間がたっていません。

自転車を回収して、高校生は私のもとにやってきました。

「大丈夫ですか?」

「お願い、救急車呼んで」

近くを通りかかった彼の同級生が私の訴えに答え、救急車を呼んできてくれました。

それから、大変でした。

加害者である高校生をどうしようか、と思っていると、

親切面したおばさんが代わりについてくれるというじゃありませんか。

ところが、

「ダメだ、逃がしちゃ。

後で大変なことになる」

そうあっちの世界の声は私にいいます。

まだ衝撃の残る頭では考えられない私は、あっちの世界の声にいわれるままに動いていました。

そうして、私は無事救急車に乗り、高校生は警察の尋問を受けることになったのでした。


この後、考えてみると、声がいうことは正しかったみたいです。

あそこで意識を飛ばすと、救急車で来てくれた人たちに叩かれたりして、かなり痛い思いをします。

しかも、それでも意識が戻らないことがあるので、かなりやばいそうです。

そして、当事者である高校生をそのまま学校に行かせてはいけないんです。

ここで行かせると、高校生は学校ごと警察から指導されます。

しかも、高校生が見つからなかったら、かなり大きな事件に発展してしまうこともあるそうです。

あっちの世界の声に、助けてもらいました。

さて、事故の後、ですが、その高校生の両親が私に対して不祥事を起こしました。

そのせいかどうかは知りませんが、高校生は大学に落ちました。

そして、私は学校側に告げ口をしたので、この後、高校生はどうなることやら。

(告げ口をしたのは、あまりにも酷いことをしたからです。

そうしないと、私の両親が苦労して私を学校へ連れてってくれたことが無駄になってしまいます。)

良い学校へ行っていても、悪いことをしてはいけませんよね。

G高校、もっと学生に指導せんかー!


おしまい





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