あっちの世界ゾーン第八十四夜「夢枕」

和歌大将信長波平さん談


よく...霊感があるとか無いとか言いますが、一口に霊感といっても能力は様々だと思います。

私は霊を見ることもできないし、霊の声を聞いたこともない....

しかし、どうやら予知夢(特に人の生き死に)の能力はあるようです。

これは、5年前の話です。

その夜私は夢を見ていました。

私は自宅のソファーで寛いでいると....ピーンポーン....チャイムが鳴りました。

私が玄関まで出ていくと....先輩(女)が立っていました。

結構なかの良かった先輩で...先輩と先輩の友達とで遊びに行ったことも何度かありました。

『どうしたんですか?急に?』

私がそう訪ねると...先輩は黙って箱の様な物を差し出しました。

『なんですか?これ...お歳暮...じゃないみたい..プレゼント?』

私は箱を開けました。

『なんだ..コリャ?』

..中には水がイッパイに入っていました....しかも底が見えません....

『深いな....』とっさに私はそんなことを思いました。

すると『....そうよ...』先輩の声が聞こえました。

私が顔を上げると..先輩が玄関の外に吸い込まれるように..消えてゆき、

最後に目だけが私を見詰めていました.....しかしすぐにドアがバタンと閉り、

静けさが訪れました。

私はまた箱に目をやりました。

すると、水の中から藻の様な物が飛び出てきて、私の体に絡まってきました。

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜』

目が覚めるました。

『変なゆめ...』私は気にせず、すっかり忘れていました。

それから数日して先輩が行方不明だと連絡をもらいました。

北海道の湖でモーターボートだかモーターバイクだかで、ほかの人と接触、

投げ出され行方不明ということでした。

さらに一週間後...先輩の友人から電話がありました。

『今日お通夜だから..きてね』

『だめ..だったんですか』

『うん......』

『ずいぶん時間かかりましたね...』

『うん....結局ダイバーが湖に潜って...発見したんだって...藻に絡まって

死体が浮いてこなかったんだって...』

『藻.....に?』



結局私はあの時どうするべきだったんでしょう......





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