あっちの世界ゾ〜ン第弐十七夜「修験者のお礼」

むへさん談


あっちかこっちかよく分からないんですが、不思議な話なので投稿します。


私の母の実家は某島で100年近く旅館をしております。

100年の旅館と申しましても鉄道も通っていないカントリーな漁村の

単にボロくて汚い旅館で、島が観光地になる前はよく分からない人の流れ場でした。


この話は母が小さい時、50年ほどまえの終戦直後くらいの話です。

当時はこんな島に来るのは旅回りの芸人や、薬売りや、

都会に居られなくなった訳ありの人が多く、当然みな貧しかったので

旅館の泊り賃のかわりに住み込みで働いたりする人もいました。

そういう時代だったんですね。


ある日修験者が一晩泊めて欲しいと来たので快く迎えました。

もちろん田舎の人間は信心深いのでお代などは取りませんし、

貧しいながら精一杯のサービスをしました。

翌朝、修験者は宿賃が無く心苦しいのでせめてもの礼に

「腹痛の治る腹当て」をさしあげましょうと、

異常に汚い「赤い腹当て」(金太郎さんが着けているような物)をくれました。

みんな内心有り難いけど汚くてやだなぁと思ったそうです。

そのご旅立つ修験者を見送りに港まで行くと、修験者は礼を述べた後2回手を叩き、

シュシュシュシュシュシュー

っと海の上を滑って行ってしまったそうです。


みんなビックリしたものの「はぁ、偉い人は違うべなぁ」と納得しました。

(私も小さい時からこの話を聞いていたので、

人間は修行すれば海を走れると信じてました)

その後しがない無医村で「腹当て」は大ブレイクしたのは言うまでもありません。

腹痛はもとより、頭痛、発熱から水死体の蘇生まで出来たというから驚きです。


その後現代医学の浸透につれて「腹当て」の出番は少なくなり、

どこかにしまってしまったという事ですが、今でも探せばあると言っていました。



でも死体に付けたような汚いものを、わざわざ探すなと釘をさされましたが(^^;

いつかは探しだそうと思ってます。







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