あっちの世界ゾ〜ン第三十夜「電波系女襲来」

三堂りあるさん談


久しぶりの投稿になります。

三堂りあるです。


いつの間にか入っていたPHSに入っていた電話番号。

知り合いの誰かからだと思い、かけてみたのが始まりでした。

「はい、カミハラでございます。」

かけた先では中年の女性が出てきました。

でもカミハラなんて知り合いはいなかったと思うので

向こうからの間違い電話が自分のPHSに入ったのだと思ったんです。

「えーと、あの・・・」と言いよどんでいると、

「あら?ひょっとして三堂君かしら。ちょっと待ってて。娘と替わるから。」


向こうは私の名前を知っていました。

これは完全に自分のど忘れかな?と思っていると

「はい、カミハラです。三堂君、久しぶり。」

電話の向こうの声が替わりました。

声は私と同年代のようでした。

「えと・・・カミハラさん?ゴメン、俺、キミのこと覚えてないんだ」

私は正直に相手に自分の現状を伝えました。

「えー、ひどいなァ。私は三堂君の事よく覚えているよ。」

普段、一度話した事のある女性の事は忘れないと思っていた私でしたが

「ど忘れ」がないとも言えないので謝りました。


「カミハラさんと俺っていつ会ったかな?」

相手の正体をはっきりさせるために聞いてみました。

すると彼女は

「ちょっと話したい事があって電話かけたの」

こちらの言葉が聞こえなかったのか話し始めました。

まあいいや、内容次第で正体がはっきりするだろうと思い耳を傾けていると

「・・・・・」

いきなりの沈黙。

しばらく待っていましたが、沈黙が続きます。

「どうしたの?」

「えっとね、三堂君に好きな人がいたとします。でもその人はとても忙しいの。

だから自分を向いてくれる事もほとんどないのね。

そんな場合、三堂君はどうする?」


沈黙の後に恋愛の相談??

そんな話をするほど親しい人間を忘れるかな、俺?と思いながらも、

「やっぱり無理にでも、と言っても向こうが迷惑しないカタチで

接触してみると思うよ。そうしないと始まらないだろ?」

と真面目に考えて答えました。すると・・・

「そう言うと思った。だから今、こうして接触を試みているんだよ」


・・・来た。


沈黙の時からこんな展開になるんじゃないかと思いましたが、まさか。

でも、待てよ。

カミハラさんの母親まで私の事を知っていたよな?

するとカミハラさんは母親にも自分の恋愛に協力を頼んでいるのか?


そしてこの電話。

その後の会話で私は真の恐怖を体験する事になったのです。     

                                つづく


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(前編のあらすじ)

R君の携帯に入っていた謎の電話番号はカミハラミサエと名乗る者のものだった。

見ず知らずのはずのミサエはR君の事をよく知っている様子。

そのミサエが電話してきたその理由は!


「えーっとね、ワタシ、R君の事好きなの」


は!?

R君はもちろん驚きました。

記憶にない女の子からそんな事言われても正直困りました。

夜の公園のベンチに腰掛けて電話しながらR君はどうしようか、悩みました。

そして・・・


「そういう気持ちは嬉しいんだけど、俺のどこがいいの?」

と聞き返しました。

R君は会話をして、その中から彼女の記憶を引き出そうとしたのです。


自分は相手を知らない。

けれども相手は自分の事を知っている。

相手の記憶がこちらにないかぎり答えようがないと思ったのです。


「・・・・・」

しばらく沈黙する受話器の向こう。

黙って待つR君。

やがて、

「だって

K.Iは優柔不断じゃない。

D.Iは顔が人間とは思えないしー。

Y.Uは勘違い系ってヤツ?

G.Eはワタシの趣味じゃないのよねー」

今までの沈黙が嘘のように彼女はイニシャルと

その人物の気に入らない点を早口でしゃべり始めました。

何人の悪口を言ったのか、何分そんな事を言い続けたのかは

はっきりしないそうです。

ただ「普通」じゃない時間だったとR君は話してました。

その時間の最後の言葉が

「だからR君がいいの」・・・でした。


R君が思わず身震いしたのは

春先の冷たい風のせいだったのだろうか?

R君は相手が尋常でない事に恐怖していました。

そして思わず聞いたのです。

「俺はキミを知っているのか?」と。


ノイズに混じって笑い声、男の笑い声が聞こえたかと思うと、

今度は逆に耳元で囁いているくらいはっきりしたミサエの声で

「R君はワタシの事知らないと思うヨ。

でもワタシはR君の事見ているヨ・・・今だって」


ぎょっとなって思わず回りを確認するR君。

近くには誰もいません。

ただ、少し離れたところに、

暗い公園の中でうっすらと明かりをたたえている電話ボックスがあり、

その中の電話の受話器はちゃんとかけられていないで、

コードの限界まで重力に引かれて垂れ下がってブラブラ動いていました。

気が付くと電話は切れていました。


翌日の昼間、昨日の事が気になったR君は昼間である事で勇気づけられた

事もあって昨夜の着信履歴の調べてかけ直してみようと思いました

が!

昨夜かけた番号は着信履歴に入っていませんでした。

気味の悪い思いだけが後に残っていました。

                               <終>







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