沁あっちの世界ゾ〜ン・第十五夜「緑色」
キリさん談
大学時代の友人R君が体験したというお話しです。 夏のある蒸し暑い夜中、R君は突然自室のベットの上で目を覚ましました。 住み慣れたわが家なのに、なぜか今夜に限り、何とも違和感を感じる−。 で、寝入ったときのことを取りあえず思い返してみました。 −そう、確か自分は電灯とTVをつけっぱなしにしたまま寝入ってしまったはず (R君は頻繁にこれをやる)。 それが今、部屋は真っ暗で、TVも消えている。 母が消して行ったのかもしれない。 だが、それを差し引いても、なぜか違和感が残る−。 でも実はこのとき、R君はなかば気付いていたのです、 視界のすみに映る、緑色に光る異様な物体に。 気付いていながらも、頭が冴えていくにしたがって その物体も一緒に消えてしまってくれることを半ば期待していたのです。 だが頭がクリアになっても、依然としてその物体は視界から消えず、 却ってその物体からの強いプレッシャーが明確に感じ取れるようになり、 視界だけは少しも変えぬよう努めながら、 「あぁ、ヤバイことになったなぁ」としばらく天井を見つめていました。 しかし、いつまでもそのままにしておくわけにはいきません。 R君は長考の末、勇気を出して緑色の物体のほうに視線を移してみました。 するとそこには、緑色に光る老婆が、開け放たれた窓に片方の足をかけたまま、 こちらを振り返って凄い形相で睨んでいるとのこと。 「エェ〜!!なんでよりにもよってこんな ワケ分からないモンがオレの部屋にいるワケ???」 しかもR君のことを睨んでいるし。 そういった不条理さがまたいっそうのことR君の恐怖心をかきたてます。 もちろんこの間、R君は「緑のババア」と見つめ合ったまま、 まったく視線をそらせず、身動き一つとれない硬直状態。 ようやくR君は、再度勇気を振り絞り、硬直状態を自ら解き放つように 「うわぁぁぁぁ〜っ!!」 と叫び声を挙げながら、自分のベッド足側の壁にある電灯のスイッチを押しました。 電灯はバチバチッと音をたてて再び灯り、 その瞬間TVにも「ブィン。」と画像が戻りました。 その眩さに一瞬目が眩んだR君は、目をしばたきながら窓側に視 線を戻すと、既に緑のババアの姿はありませんでした−。 その光景を想像してみると、いまでも鳥肌がたちます(It's AUTOMATIC!)。 緑のババアはなぜ彼を睨んだのでしょうか。 そもそも何をするために彼の部屋を訪れ、 そして退出した後今度はどこへ行こうとしていたのでしょうか−。 ついでに、今電話が鳴った(番号非通知)のは、単なる偶然なのでしょうか。 こわいよー。 |
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