あっちの世界ゾ〜ン・第七十弐夜「怪奇飛行物体」

みみなしうさきちさん談


はじめまして。いっつもたのしくよませてもらっています。

恐い話読んでたら、おもいだしてしまいました。

なので、ここに書く事で成仏してもらいたいと思います。

読んでやってくらさい。(少し長いかも・・・)


高校3年の夏でした。

その日は河原で地元の花火大会などのイベントがあり、

わたしはとってもうきうきしてました。

・・・というのは、親友のイキなおぜん立てによる、ずっと大好きだった男の子との

初デート!!という、涙のちょちょぎれるような大イベントが、まっていたからなのです。

小学校以来の浴衣なんか着て、にやける顔をおさえながら

男女6にんのまつ、集合場所である近くの小学校へいそぎました。

そこから河原まで、みんなでぶらぶらあるき、土手の上に並ぶ屋台のクレープとか、

たこやきとか食べながら、奇麗な花火があがるのを、眺めたのをよくおぼえています。

花火の第一部が終わると、河原に設営されたステージで、飛び込み参加の盆踊りがはじまり、

そのあとスポットライトのイルミネーションのなか、

大々的に花火第二部が行われる事になっていました。

盆踊りが始まる頃には、当初の予定通り、

友人達のはからいで、彼と私はふたりっきりんりん。

初めてのツーショットで、手もつなげず、言葉少なになんか

どきどきしながら盆踊りを見ていたそのときでした。

川の対岸にある花火の打ち上げ場所にふと目をやると、たくさんならべられた

筒からなにかが飛び出たような気がしました。


「 えっ?」


その物体は、まっすぐ上には飛ばず、川を横切り、こちらにとんでくるのです。

あたりは、祭のライトで、やや薄暗いため、良く見えないのですが、

その物体は黒い球で、大きさはドッジボールぐらいでしょうか。

なにやら尾を引き、ゆらゆらと、しかも次第にはやくなるような異様なスピードで、

それはあきらかにこっちにとんでくるのです。

「ひぇぇー」叫ぼうとしたわたしの喉が、かすれた、へんなおとをたてました。

隣の彼に、あれ、あれ、と告げるまもなくそれは私の目の前に。

それは。

ザンバラ髪の生首でした。

うす暗闇のなかで、それを、みてしまいました。

顔の半分が砕けていました。片方のあごががくんと垂れ下がり、

目も片方飛び出ているように見えました。

何より恐かったのは、はっきりとこっちをみていた(ようにおもった)から。

目の前まで、飛んできたそれは、頭上へ高く高く急上昇していなくなったそうです

(上昇するのだけ、彼がみた。私は恐怖で顔面硬直。)

「いまの、な、っなに?」

ひゅぅっという音で気づいた彼は、このときカラスかなにかだ

と思ったらしいですが、私は、口が聞けず、「あ、あ、ああ・・・・」

私の近くにいた、3人が同様にみたらしく、顔が引き攣ってました。

夏休みが終わっても、毎晩のようにそのゆめをみました。

ホントにあれは一体なんだったんでしょうか・・

甘いムードに浸るはずだった、高校生活のいわゆる青春の記念日となるはずのこの日、

キス初体験の予感もむなしく恐怖初体験記念日となった次第です。


むかし、川のほとりに、罪人の処刑場があって、キリシタンがたくさんころされたそうです。

あれ以来、何にもそういうものはみてませんが、

河原の生首を見掛ける人は、たびたびいるそうです。

あんなおもいは、一生に一回でもう結構!

いまでも夏は実家に帰るたび,思いだしぞっとします。

成仏しろよ。おねがいだから。






やじるし指
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