あっちの世界ゾ〜ン・第八十九夜「関門海峡の女の幽霊」

ボスケさん談


皆さんはじめまして。私も怪談収集マニアです。

今まで(約30年間)色々な怪談を収集してきましたが、

それらは4種類に分類できます。

恐くない作り話、恐い作り話、恐くない実話、そして、「恐い実話」です。

ここでは、私の記憶を整理するのも兼ねて、

「恐い実話」を中心に随時お話していきたいと思っています。

よろしくお願いします。

今回はご挨拶代わりに、「恐い実話」です。

私の崇拝する稲川淳二師匠の口調でいきます。


私の仕事関係の知り合いで、山口県の方なんですが、

女性の方なんですけど、いるじゃないですか。

悪く言えば、女性らしくないんですけど、

良く言えば、本当に気が合うというか、気を許せるっていうんですかね。

年は私よりもいくつか上で、お姉さんてもんがいたら、

こんな感じなのかなぁって、そういう人なんですけど。

その人すごい色々な不思議な体験してるんですよ。

でも話したがらないんですよね。

信じてもらえないんじゃないかとか、いろいろ考えちゃうみたいで。

でも私がそういう話大好きですから、無理矢理聞き出した話なんですけど。


彼女お酒が好きな人で、仕事の帰りに、飲み友達でもって集まって、

わーってやったそうですよ。

いつもの事なんですけどね。

お酒には、そんなに弱い人じゃないんで、ちょっと歌でも唄って、

酔いがさめたから、いいやってんで、お開きにして、

一人で車運転して帰っちゃったそうなんですよ。

本当はいけないんですけどね。

で、山口県の人ですから、関門橋ってあるじゃないですか、

その本州側に、海にそってずーっと道がある訳ですよ。

そこを、北へ向かって走ってましたから、左が海で、見上げると

関門橋が見える場所なんですけど、

右はガケが切り立ったようなところなんですね。

道は真っ直ぐじゃないんですけど、幅も結構あって、

中央分離帯に植木やなんかもあって、夜中なもんですから、

みんな結構とばすんですよ。彼女も、いい気分でとばしてた訳ですね。

しばらく走って、ふと見ると、

「あれぇ、あんなところに、女の人が立ってて、危ないなぁ。」

彼女、そう思ったそうですよ。

遠くの、中央分離帯の、その植え込みのところに、

白い着物着た女の人が立ってるのが見えたそうですよ。

夜中とはいえ、結構通りが激しいですから、

「道を渡ろうとして、止まっているのかなぁ」

と思ったんですが、

そんな事を考えてるうちに、こっちも結構なスピードですから、

どんどん近づいてくる訳ですよ。

実はその人、そういう体験結構してる割に、恐がりなんですよ。

で、そういうものを、見た瞬間に、

「あっ、いけん、見てしもた!」

と思って、目を背けるそうなんですよ。

その時も、すれ違いざまに、

「これは人間じゃない!」

って感じて、目を背けちゃったらしいんですよね。

で、いつもそういうの見た後、目に残ってるらしいんですよ。残像が。

そこで、話の途中だったんですが、私聞いたんですよ、彼女に。

「幽霊って、どんな顔してるんですか?

そこに人間がいる場合とどう違うんですか?」

って。興味ありますよねぇ。私だってはっきり見た事はないんですから。

彼女が言うには、人と全然違う。まず気配を強く感じるんですって。

で、目を背けてから残像が浮かび上がってくると、

これは、ほとんどの幽霊がそうらしいんですけど、

目は白目はなくて真っ黒で窪んでて、

口はニャーって形で開いてるんだそうですよ。

その時も、そんな、女の人を見ちゃった訳ですよねぇ。

で、恐いもんですから、さっきよりもスピード出して、

「いけん、見てしもた!見てしもた!」

と思いながら、とにかくその場を立ち去りたいって、そう思ったそうですよ。

しばらく走って、少し安心はしたんですが、

今度は、一人で車運転してる訳ですから、気になるんですよ。

後部座席が。

幸い、ルームミラーで見ても何も変なものは無くて、

また少し安心したんですけど、今度は目線を前に戻した後、

何かが、視界に入るんですよ。白いものが。

運転席側の、ドアミラーありますよねぇ。そこに、何か写ってるんですよ。

「いやだなぁ」

と思っても気になりますから、思い切って見たんですよ、彼女。

そこで彼女が見たものは、

さっき見た女の人が、運転席側の、ドアのところしがみついて、

ミラー越しに、こっち見てるんですよ。

こうなると、もう完全に普通の状態じゃいられないですよ。

「いやーーーーーー」

って悲鳴あげて、猛スピードで家に帰ったらしいです。

まぁ、気絶したり、事故おこしたりしなくて、

本当に良かったなぁと思ったんですけどね。

その人、今までで一番恐かったから、

思い出したくないって言いながら、この話してくれたんですよ。






やじるし指
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