あっちの世界ゾ〜ン・第九十八夜「カミハラ襲来」

三堂りあるさん談


みなさん、こんばんわ。

久しぶりの投稿になります[三堂りある]です。

私の知り合いのR君に起きた体験です。


「おや?」

R君は自分の携帯に着信があったのに気が付きました。

それは家に帰る途中、時間は夜の11時くらい。

ディスプレイに番号が表示されています。

R君は友達の番号を覚えられるほど賢くなかったので

(賢くなかったから留年してしまいました☆)

誰の番号か分かりませんでした。

時計で時間を確認して「ギリギリ失礼な時間でもないかな」と

思ったのでその番号にかけ直しました。

それが恐怖の始まりだったとは。


トルルルル・・・ガチャ

「はい、カミハラでございます・・・」

出たのは中年のおばさんらしい声。

「カミハラ」?

そんな名字の知り合いはいません。

自分の聞き間違いかも、と似た音の名字を考えてみますが

「いままでそんな人にあったかな〜」と首をかしげてしまいました。

「えっ、いや、あの・・・」

ちょっと頭がパニックになったR君はしどろもどろ。

すると受話器の向こうは

「あら、R君ね。ミサエ(仮)に替わります。」

と、どうやらR君を知っているご様子。

ミサエって誰?

しかも親とも知り合い?

R君はミサエを待つ間、頭の上に幾つも点滅する「?」を出していました。

「あっ、R君☆」

ミサエらしき女性が電話に出ました。

やはり聞いたことがない声です。

「あ、電話くれたみたいで・・・」

R君はそういうのがやっとでした。

「電話したよー」と返事。

「あのさぁ、キミ誰?」

と聞きたいのはヤマヤマでしたが第一、失礼ですし

先にも述べましたがR君は賢くないので

(だから留年してしまいました☆)、忘れている可能性もあったのです。

だからR君は会話を進めてその中で自分の記憶を辿ろうという作戦に出たのでした。

「んで用事は何?」

相手の事を覚えていないのにそう切り出すと


電話の相手、カミハラミサエは・・・!


<後編に続く>


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(前編のあらすじ)

R君の携帯に入っていた謎の電話番号はカミハラミサエと名乗る者のものだった。

見ず知らずのはずのミサエはR君の事をよく知っている様子。

そのミサエが電話してきたその理由は!


「えーっとね、ワタシ、R君の事好きなの」


は!?

R君はもちろん驚きました。

記憶にない女の子からそんな事言われても正直困りました。

夜の公園のベンチに腰掛けて電話しながらR君はどうしようか、悩みました。

そして・・・

「そういう気持ちは嬉しいんだけど、俺のどこがいいの?」

と聞き返しました。

R君は会話をして、その中から彼女の記憶を引き出そうとしたのです。

自分は相手を知らない。

けれども相手は自分の事を知っている。

相手の記憶がこちらにないかぎり答えようがないと思ったのです。


「・・・・・」


しばらく沈黙する受話器の向こう。

黙って待つR君。

やがて、

「だってK.Iは優柔不断じゃない。D.Iは顔が人間とは思えないしー。

Y.Uは勘違い系ってヤツ?G.Eはワタシの趣味じゃないのよねー」

今までの沈黙が嘘のように彼女はイニシャルと

その人物の気に入らない点を早口でしゃべり始めました。

何人の悪口を言ったのか、

何分そんな事を言い続けたのかははっきりしないそうです。

ただ「普通」じゃない時間だったとR君は話してました。

その時間の最後の言葉が

「だからR君がいいの」・・・でした。


R君が思わず身震いしたのは春先の冷たい風のせいだったのだろうか?

R君は相手が尋常でない事に恐怖していました。

そして思わず聞いたのです。


「俺はキミを知っているのか?」と。


ノイズに混じって笑い声、男の笑い声が聞こえたかと思うと、

今度は逆に耳元で囁いているくらいはっきりしたミサエの声で

「R君はワタシの事知らないと思うヨ。でもワタシはR君の事見ているヨ・・・今だって」

ぎょっとなって思わず回りを確認するR君。

近くには誰もいません。

ただ、少し離れたところに、暗い公園の中でうっすらと明かりをたたえている

電話ボックスがあり、その中の電話の受話器はちゃんとかけられていないで、

コードの限界まで重力に引かれて垂れ下がってブラブラ動いていました。

気が付くと電話は切れていました。


翌日の昼間、昨日の事が気になったR君は昼間である事で勇気づけられた

事もあって昨夜の着信履歴の調べてかけ直してみようと思いました

が!

昨夜かけた番号は着信履歴に入っていませんでした。

気味の悪い思いだけが後に残っていました。         <終>






やじるし指
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