あっちの世界ゾ〜ン第三十九夜「背後の気配」

ニコニコトシチャンさん談


みなさんこんにちは。お久しぶりです。

以前いくつか書き込ませていただいた事の有る新潟市在住のニコニコトシチャンと申します。

最近、ちょっと気になる経験をしたもので、

久しぶりにみなさんに聞いていただこうかと思いやってまいりました。

この8月の2日から6日にかけて、自宅の車庫でちょっとクルマをいじってました。

子供達を寝かしつけてからの作業ですので、

開始が10時頃からとなってしまい、一人で夜中まで車庫で作業しておりました。


あれは8月4日の晩、正確には日が変わっておりましたので8月5日の深夜になりますが、

1時30分頃にようやくその日の作業を終わり、風呂に入っておりました。

鏡に向かって頭を洗っておりますと、

何か後ろの磨りガラスの扉に動く物が見えた様に思いました。

しかも、後ろに人がいる様な、と言うより

人間がいるよりも遙かに強く人が居る気配が感じられてなりません。


以前はこの様な事もよく有ったのですが、ここ数年は無かったもので

久しぶりの感覚にとまどいながら、後ろを振り返ったりしましたが、もちろん誰も居りません。

この誰かいる様な感覚は風呂から上がるまで付きまといました。


翌8月5日には、そんな事が有ったのはすっかり忘れ、新潟市内の現場へ中央監視装置の

メンテナンスの作業で出かけ、昼食時に現場の近くに有る馴染みのD喫茶店へ行きました。

この店とは、15年程の付き合いで、単車好きなお客さんが集まっていた店で、

昔は毎晩10台以上もの単車が店の前にズラリと停まっていたと言う店で、

私も独身の頃は毎晩遊びに行っていたところですが、

最近はいろいろと忙しく、数ヶ月ぶりに訪れたのです。


席に付くと、ママさんが小声で「A君が亡くなったのって知ってた?」と言って来られました。

ここ数日、忙しさにかまけて新聞すら読んでいなかったもので、

全然知らなかった私は驚いて聞きますと、A君は8月1日に亡くなったとの事でした。


この時も、私は昨晩の後ろの強い気配の事は思い出しませんでした。

それ以上にあの元気だったA君が亡くなった事にショックを受けておりました。

しばらくしてから、そう言えば、

もしかして昨晩のあの人の気配は彼だったのでは無いかと思い当たりました。

最後の別れに寄ってくれたのかなと思います。


また、数ヶ月も行かなかったD喫茶店に

A君の事が有った数日後に寄った事も偶然とは言え不思議な気がしました。

メンテナンス作業は特にこの時期でなければならないと言う事も無かったのですから。


A君は単車が好きで、しばらく大阪でバイク屋さんで働いていましたが、

そのお店の閉店を機会に、地元の新潟に戻って来て、

ぶらぶらしていた時に単車が集まるD喫茶店を見つけ、常連になった人でした。

かれこれ10年程前の事だったと思います。

たまたま家も近かったので以前は良く、車を持っていなかったA君を送ってあげたり、

一緒に車で出かけたりしていましたが、ここ数年はほとんど会う事も

ありませんでしたので、昨年結婚したと言う話しだけは聞いていた程度でした。


ママさんのお話では、結婚後何か病気にかかり入院し手術したりしていた

との事でしたが、詳しくは判りませんでした。後日A君のご実家にお参りに行った

際にお聞きしたところですと、何でも目の後ろ側に腫瘍が出来、これは手術で除去し、

悪性では無いとの事だったが、しばらくして転移が見つかり、その位置が手を

出せない様な場所だったた治療が出来なかったそうでした。

しかし本人は非常に痛いため痛み止めの薬を処方してもらい、

これを飲んでいたのだそうですがかなり強い薬で、

身体がふらつき立っていられなくなる事も有ったそうです。

彼は結婚し奥さんと2人でアパートで暮らしていたのだそうで、

その日もこの薬を飲んで窓枠に座って休んでいたそうです。

奥さんが食事の支度をするため、ちょっと目を離し、

振り返るとそこにはもう姿が見えなくなってしまっていたそうです。

A君は5階の自室の窓から転落し、亡くなってしまいました。


8月7日に私はA君のご実家へ行きました。

丁度初七日の法要が終わったばかりだったとの事でした。

数年ぶりに会ったA君は遺影の写真の中で、昔の印象のままひょうきんな表情でした。

ご遺族の方には、特に奥さんには、なんとも言葉が出ませんでした。

36歳の若さでした。

長々と失礼しました。





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