侵あっちの世界ゾ〜ン・第四十五夜「北海道 奈落 女の子」
エマ(坪内志郎)さん談
何年か前に、北海道の某公演に参加した時の体験です。 その劇場の楽屋は、舞台の地下、俗に『奈落』と呼ばれるスペースの脇にありました。 楽屋から舞台に行く為には、その奈落を通っていかなければならないのですが、 フェンスがしてあるとは言え、ちょっと身を乗り出せば、 7〜8メートル真下にまっ逆さまという大変危険な状態。 おまけにその通路は狭く、リノリウムの床はとても滑ります。 「あぶないね」「あそこ通るの、怖いよね」と、よく話題にのぼっていました。 ある時、その通路を渡っている途中、 どうも吸い込まれていく様な感覚に、襲われました。 僕は、高所恐怖症なので、なるべく奈落をのぞかない様にしていたのですが、 どうしても7〜8メートル真下の、しかも、ある一点に目が行ってしまうのです。 「ぽわあん」と赤く光っている様でした。 身体は段々とフェンスすれすれまで、乗り出していました。 自分では、言う事が聞かないのです。 「ああ、おれは舞台衣装のまま、死ぬのかなあ」 と、半ば本気で考えてました。 その時、「なにしてんの?」と役者仲間のY君が声を掛けてくれました。 「あ、あそこ.....」と、僕は赤く光って見える一点を指しました。 「あー、あれね」 彼は、霊感が強いのです。 「あんまり見ない方がいいよ......赤い服着た女の子が、手招きしてるから......」 冬の北海道で、ホントに寒い目にあいました。 |
戻る |