あっちの世界ゾ〜ン第五夜「世の中には、すごい人がいるもんだ」

愛栄堂さん談


約3年前の初冬。

Kに子供が生まれた。

嬉しくて、みんなと飲みたくて電話。当日、捕まったのは私だけ。

翌日、再度 集合となった。

私が合流して、後はMが来れば全員集合。

K「M、別れたみたいだから、その話題に振るなよ。」

Mの嫁さんは、Kの結婚式の時に会っただけだが、中島朋子(以後仮名朋子)

にそっくりで、可愛い娘であった。美人が知り合いから 居なくなるのは寂しい。

それに....

それから約4年前のKの結婚式。

自分で云うのも変だが、見た目で嫌われることは まず無い。

しかし、何故か 朋子は 私から明らかに引いていた。

当時、東京の修行先へ入門したばかりで、ストレスが溜まり、

二次会の司会も任されていて、かなり弾けていた。

「ハイテンションだから、怖いのかな?」

でも、何かが引っ掛かっていた。

何時会うかも分からないが、理由を聞きたかったのに、聞けなくなった。


Mも合流して、盛り上がる。

M「ところでさ、S(私)、仕事の調子はどうなんだよ?」

私「全然儲からないよ、まったく(笑)。」開業1年少し。今も。

M「どんな人が来るんだよ?」

私「どんな人か。変わった人だとな「除霊出来るか?」って来た人だな。」

「あっちの世界」への入り口でした。

M「除霊出来るの?」

私「出来るとは言えないけど、痛みを取るのも、一種の除霊だと思うよ。」

その相談に来たおっさん曰く、

「仕事(クリーニング業)で儲かって、家と工場立てて引っ越ししたら、

嫁さんの左腕が挙がらなくなったんだ。病院とかあっちこち行っても、

少しも良くならない。これは、家相が悪いか何かで、憑いたんだと思うね。

それで、あんた除霊出来るか?」


一般に「五十肩」と呼ばれる「肩関節周囲炎」でも、2年位痛む場合もある。


霊にも、いろんなステージがあるだろうし、

我々も普通、「霊」ではなく、「邪」「邪気」(じゃき)と表現します。

(ここで、お断りしますが、私は 霊的に専門の知識はありませんし、

特別な処で学習したこともありません。数人でありますが、仕事仲間が奇功

(奇行(笑))などへ進み、その情報を教えてもらっただけ等に過ぎません。

ですから、私の感じたままを表現してるだけなので、誤解されませんように。)

我々の東洋医学では、

例えば、一般に「風邪」と呼ばれる「感冒」は、

「寒邪」(かんじゃ)が、体内に入って起こると考えます。

「五十肩」は、「寒邪」+「湿邪」が原因であることが 多い。

M「実は、俺、別れたんだけどさ、嫁さんが、見える人だったんだよ。

それだけが原因じゃないけど、やっぱり大きかったな。」

Mは、自分からタブーを破ってくれました。


M「こんな話しても、誰も信用しないだろ。だから、したことないんだ。」

「見えないけど、気配は分かるよ。」程度の私を過信して、話は進む。

朋子の周りは、とにかく賑やかなんだそうだ。

大きな交差点、踏み切り、高速道路下の一般道等には、必ず何かいるそうです。

それも、みんな首が無いとか、体半分とか、足が無いとか。

M「ほら、あそこにいる!って言われても、見えないんだよな。」

朋子に云わせると、我々の地元は、自縛霊が強すぎる とかで、

出来れば近寄りたくない土地だったらしく、殆ど遊びに来たことは無いそうだ。

酷い話である(笑)。

しかし、こんな調子では、例えば広島には行けないだろうな。

もともと、M一家も霊感は強いらしいが、特別意識したことはなかったそうな。

朋子が、Mの実家へ遊びに行った時のこと。

家族揃って食事。

しかし、落ち着かない 朋子。

M 「どうしたんだよ?」

朋子「何でもないの。」

家族の前なので、そんなことを何度か 繰り返す。

朋子「家の周りを 回ってるんです。」

家族全員で、朋子の指さす方を見る。その指が壁を過ぎ、窓を指した時、

M「火の玉が、ふわって飛んで行ったんだよ。吃驚したぞ。」

それから、M家では、そいつが認知されたと思ったのか、頻繁に出没するように。

「タッタ、タッタ、タッタ」と家の周りを走る足音がし、

「ガシャン!」と玄関を開け、

「ダダッ!ダダダダダダダァ!」廊下、階段を駆け上がり、

「バタン!!」と2階の部屋のドアを閉めて、

「ダダダダダダダァ!ダダッ!」と降りて、

「ガシャン!」とドアを閉め、帰って行くらしい。


M「最初は、びびったぞ。」

当たり前である。しかし、慣れとは 恐ろしきかな。

M「そのうち「おい!兄貴か?」「違うぞ、あいつだ。」煩いぞ!って」

すっかり「あっち」に染まるMだが、

一度だけ、どうにもならなかったことが。

M 「やっぱりこれが、一番の原因かな。無理だよ。」

ある夕方、朋子はMには何も言わず、黙々泣いている。

理由を聞いても、何も答えない。そんなことを繰り返してるうちに、


朋子「Mが悪いわけじゃないの。私自身の所為なの。

来るの。ここへ来るの。怖いの。」

何かが 来るらしかった。

M 「俺に何か出来ないか!」

朋子「ありがとう。でも、何も頼めないの。」

その時刻が近づき、ガタガタ震える 朋子を抱き締めることしか出来ないM。

ドアの前まで来て、そいつは 何故か 帰ったらしい。

その時の、朋子の泣き叫びは、凄かった。

M 「俺、何も出来なかったんだよ。」

私 「まるで「ナイトヘッド」(東京ローカル深夜ドラマ)の世界だな。」

私が今までに聞いた話の中では、間違いないしに一番のリアリティー。

(伝わっただろうか?)

そんな、特異体質の朋子であるが、

M「一番吃驚したって言ってたのはな、朝のラッシュの駅で、ウルトラセブン

みたいに、ビーム出しながら歩いて来るサラリーマンを見た時だって言ってた。

分かる?」

私「第三の眼、ツボで云えば「印道」。名前は知らないけど、透視が出来る人は、

ここのチャクラが開いてると云われるね。 それに友達Tが行ってる

気功の勉強会の先生は、頭の天辺から全宇宙からの気を集め、

印道から患者に照射するらしいよ。全員が見えるわけじゃないらしいけど。」

とても 一般人の前で出来る話ではない。

Tは、勉強熱心が故に、未知の領域へ。

何れ、私もそこへ向かうだろうと云うことは分かってます。

現在解り切ってる事だけでは処理出来ない事を、

解決しようとすれば、入らざる得ない。

Tの気功の総帥は、兵庫県で外科医。

学生時代、総帥の写真をお守りのように、大切にしていた。

なかなか渋って見せてくれなかったが、

その写真には、総帥から大量の緑色のオーラが出ていた。

Tが何時も力説してたのは、

「百会(頭の天辺(チャクラ))が開くと、免許皆伝で、全宇宙と交信出来るんや。

すると、総帥から「良かったですね」って電子メールが届くんや。

俺も、早くメール貰えるようになりてーな!」 

我々の業界でも、目に見える物(簡単に言えば、西洋医学的)しか

相手にしない人が圧倒的に多く、最初は会話が弾んだ仲間も、

進む道によって会話が成立しなくなる。

そういう意味で、真面目に(仕事ネタで)会話するのは、私ぐらいに。

でも、何時もからかっていたのですが、

「全宇宙と交信出来るのに、なんで電子メールやねん?」

矛盾も多く(笑)完全とはいきませんが、Tは着々と腕を上げています。


M「そう云えば、朋子が、このメンバーの一人に憑いてるって言ってた。」

全員「誰に憑いてるんだよ−!?」

M「もう昔の話だし、忘れちゃったな」

「無責任な事、言うなよ!!」

お互い「お前に憑いてる!」と言い合う。

M「確かな..、一回しか会ったことないって言ってたな。」

嫌な汗、ダラリ....。

私とHの二人に絞られた。

結局最後までMは、名前を思い出せなかった(ふり?)が、

M「そんなに、悪いのじゃないと思うよ。悪いなら、その場で言ってるし。」

今更、そんなフォロー入れても 遅いと思う。

4年前の、引いてる顔からすると、私が当確のような..。


会話が切れた時、店の中の空気が、「ピリピリ」なのに気が付く。

叩けば、「パリパリパリ」っと粉々になりそう。

「あっち」に突入する前は、カウンターの3組の常連らしき

アベックを中心に店の空気は、華やいでいた。

そのアベック達も、何かに呑まれるように押し黙っている。

M「やばいな。みんな無事に帰れるかな、凄い来てるよ。」

私「やっぱり、やばいよな。」

K「どうすんだよ。」

M、K、私は 感じる人。


恐ろしいのは、これだけ 緊張し殺気立った空気の中、

「何が やばいんだよ?」と平然としてる感じない3人。


私 「いくら何でもさ、ここの空気が変なのは、感じるだろ?」

3人「何感じるんだよ?」  

幸せな人達である。

M「気合で、振り払うぞ!」

我々は、ダッシュで帰った。


Mのお陰で、霊感が高まった私は、あることに気が付いた。

感じる。

少し前から、気が付いていた。

視線を感じる。

誰かが、覗いている。

誰かではないな、誰か達である。

私の部屋のドアには、磨りガラスの窓がある。

振り返ると、パッと散る。そんな感じ。


M達との飲み会から、

無事生還してきた時の事。

気配の輪郭が、かなり確りしてきた。

無数の何かが、窓に張り付いている。

振り返ると、パッと散る。

私は、気を受け易い体質なのか、敏感になる。

でも、こういうケースで、敏感になる人は多いでしょう。


明くる日、

家の、すぐ裏が 地区の墓地なのですが、異変があることに気が付く。

親父やお袋に、

「墓石倒れてるけど、何やってるんだよ?」

「お墓、新しく作り直してるんだよ。」

「ちゃんとお祓いしたのか?」

聞くまでもなく、当然である。

新居のため、お祓いをして、工事に取り掛かったわけだが、

家壊されちゃ、落ち着かないわな。

それで、うろうろしてるうち、覗いてたんだろう。


元を辿れば、皆さん 御先祖様なので、あまり怖いとは、思わないことに。


しかし、新居が完成して2年は経つのに、今も 一人だけ、覗きに来ます。

たまに、団体で(笑)。





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