あっちの世界ゾ〜ン第九夜「夏ですなぁ」

那由さん談


こんにちは、那由です。お久しぶりに顔を出してみました。

いやぁー。夏ですなぁ。仕事中にミンミン蝉が大合唱しています。

…ということは、「あっちの世界」の方も盛り上がっている?!

おお…乗り遅れないうちに話さなければなりません。

まずは手始めに、最近あったヤバイ出来事など聞いてください。


2か月位前の事なんですが、わたしは彼氏と埼玉県の多摩湖付近で

真夜中のドライブをしていました。なんで夜中だったかと言うと、

べつに深い意味は無くって、単に次の日が休日だから夜中まで遊ん

でいたかったんですね。ドライブの目的は多摩湖の湖面に映る月を

一目見に行くことでしたが、あいにく雲が出てきてしまって感動の

風景は見られませんでした。でもその代わり不思議なものを見たのです。


目的の果たせなかった私たちは、仕方なく多摩湖周辺の道を当ても

なく走っていると、やがてラブホテルが建ち並ぶ道にやって来ました。

そして、そのしばらく先には結構な雰囲気の廃墟があり、

彼と2人で「うわぁー出そう。」などと言い合っていたと思います。

さて、問題の場所は今の道をぬけ、その先で合流する道を

横断した向こう側の比較的狭い道なのです。(ふぅ、長い…;)

すべての道を走り尽くした私達は、

唯一通っていないその道へ車を走らせていました。

すると、なんだか道がやけに狭くなってきたのです。

向こうから車がやってきても対向できるスペースがないくらいで、

両脇からは背の高い草が生い茂り、車の先端と脇になだれかかっていました。

その上、道は舗装されておらず、凹凸のある視界の悪い田舎道を車の

ヘッドライトのみを頼りに走らなければなりませんでした。

思わず私が「なあに、これぇ!」と呟いたほどです。

面倒なところにはまり込んだものだと思いながら、ひたすら出口を目指して

走りました。走って、走って…………………………………………。

「ねぇ…、後ろに車が一台もいない。」

不意に、運転している彼が言いました。

「え?」

私は訳がわからず聞き返すと、彼は続けて言いました。

「さっきまで後ろに車のライトが見えていたのに…。2、3台。」

そう言われて、私は後ろを振り返ってみると、そこは闇、闇、闇。

(…いない…。後ろから来てたら絶対私らと同じ道な筈なのにぁ…

一本道だったから。??!まさか消えるわけないしなぁ。

勘違いしてるんだな、きっと。)

そう思って大して気にもとめず、私は正面に向き直り、ぼんやり空を眺めました。

ところが………。

(あーあ、月。見れなかったなぁ。こんなに雲が出ちゃって、

一雨来るのかなぁ、おおっ!雲が紫色だよー。雷鳴るのかなぁ。

なんだか明るいなぁ。おや、目の前まで紫色。わおー、こんなの初めて。

あれ?そういえば周りも紫色?!なんだ、ラブホテルのネオン?

………………ではないようだ。ん???……………え?!

………ぬわぁんじゃこりゃーー!!!)


私が見た光景はこんな風でした。


あんなに生い茂っていた草がなくなり、前方の道は綺麗に舗装されて

いましたが、後ろの光景はぽかりとひらけた懐かしいような田舎道でした。

でも、なにかおかしいのです。

そう、なぜ道が見えるんでしょう。

今まで私達は車のヘッドライトに照らされるもの以外は

全く右も左も分からなかったのに。

なのに昼間と同じように360度の景色が見えているのです。

…というより、そこは昼間だったのです。

砂利道の両脇に草が伸び、道の左片側は畑。

そして、右に一軒の民家の廃屋が見えました。


そこまで見てしまった時、

突然自分達が今どういう世界にいるのか理解してしまったのです。

そう、ここは「あっちの世界」だって事に…。

そして、私達をここへ呼んだ者も……。

(あの廃屋に行ってはいけない…見てはいけない……

早く離れなければいけない…早く) ………そう思ったのです。

私は念じました、自分達がこの紫色の空間を一刻も早くぬけられるように………。

どれくらい走ったでしょうか、20分…いや、それ以上でしょうか。

私達は悪夢から抜け出すことができました。


後日、私は自分の見たものは現実だったのかどうか確かめるため、

彼にあの時のことを打ち明けました。あなたは見たのか……と。

すると返答はこうでした。


「…俺、あの廃屋のなかで何かがぶら下がっているのを見ちゃった…。」


あの廃屋の住人は自分の存在に気付いて欲しかったのでしょうか、

あれほどまでの向こうからの強烈な呼び声を私は忘れることはできません。

あそこは異界の入り口です。皆さんも呼ばれないよう気をつけてください。

ひとつ誤れば、かなり危険です。命さえ取られるかもしれません。

これは、わたしが直感的に感じた感想です。

なお、実際の道とは光景が全く違うのであしからず。

それでは、今日はこの辺で。





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