あっちの世界ゾ〜ン第五十夜「はじめから、いたんだね・・・。」

燃える女さん談


こんにちわ。建築関係の職業の方の書き込みがあったのを見て、

では私も・・・と便乗させて頂きます。「燃える女」です。

私の職業は、ビルの内装屋。

設計事務所が設計した図面から、施工図面を書いて、内装を作るお仕事です。

最初ビルというのは、本当にコンクリートと鉄筋しかなく、しかも照明も

最小限しかついていないので、まるで廃墟のようです。

廃墟と違うところは、汗臭いマッチなオジ様と、ちょっくら頭の悪そうな

茶パツのにいちゃんが右往左往して、汗水たらしているところでしょうか。

それと、廃墟と決定的に違うのは「雰囲気」です。これから作られようとしている

ビルには、ビル自体に活気があって、あっちの世界って、何?みたいな感じです。

この業界に入って8年。いろいろなビルのコンクリートと鉄筋を眺めてきましたが、

(めっちゃ偉そう)たいていの現場は、たとえ夕方になって人の引けた時間であっても、

人間の強い「オーラ」(土建業者のオヤジエネルギーとも言う)みたいなものが

残っていて、あっちの世界とは、明らかに一線の引かれた場所です。

後で、自分が手がけたビルが「出る」とうわさになれば、

「ふうん?作ってるときはそんなんなかったよ?」とか思ってしまうほどです。

たいていのビルは作られるときは霊とは無縁だと思います。


そう、あの「現場」を除いては・・・。


その現場の図面をもらい、内装の確認をしていた時から、

私には、胸騒ぎのようなものがありました。

「ああ、ここに受付があって、カウンターがついて、材質は大理石ね、それが

ウチの工事なのねフウン」なんてちょっとキャリアウーマンなことをほざきながらも、

なんだか、気が進まない感じがしていました。

そんなこんなで施工図面を書いて現場に向かい、一目建物(まだコンクリートの

塊のような感じ)を見たとき、第一印象は、「廃墟みたい・・・」でした。

中で、命をかけたマッチョなオジ様と、馬鹿っぽい若者(ゴメンッ)が

カンコンガガガと作業している音が聞こえるのに、その建物だけ、

ボコッと落ち込んだような地を這うような雰囲気をかもし出していました。

現場のオヤジパワーさえ、

なにか得体の知れないものに飲み込まれてしまっているのです。

だからといって「変だからやめたっ」なんて引き返すわけにもいかないので、

現場の事務所に行き、現場の工事担当者と打ち合わせをしました。

その間中、現場から、大工さんやら、配管業者やら、

電気設備業者やらと次々と苦情を言いに現場事務所に来るのです。

皆、いらだっているようで、すごくトラブルの多い現場なのだなと、

初めて入った私が気づくほど、中ではトラブルが多発しているようでした。

その時点で私は、その建物に足を踏み入れる機会はないし、

できるだけかかわらないようにしようと、腹を決めて会社に戻りました。

しかし、その現場に入らなければならない日は、すぐにやってきたのです・・・。


〔続〕





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