あっちの世界ゾ〜ン第五十四夜「現場シリーズ第2弾」

かずさんさん談


皆さんこんばんは。

先日初めてカキコさせて頂きました、現場監督のかずさんと申します。

このあいだお話致しました、横浜の現場の続きを書き込もうと思っていたところ

いきなり福岡の応援要請を命ぜられお返事が遅くなりました。すいませんm(__)m

横浜の続きをと思いましたが今回応援に行きました福岡の現場で ”あっち” に

遭遇してきましたので、まずはその話からはじめます。


(現場その2)  福岡県志免町

今回お話する現場は、福岡空港から車で

10分程の幹線道路沿いのごみ処分場の改修工事が舞台です。

その電話が鳴ったのは、横浜のお話を書き込んだ直後でした。


福岡の現場責任者T氏「もしもし、かずさん今ひま?」 

 か「ひまですよ。(夜中の2時だぞっ!忙しいに決まってんだろっ(怒))」

T氏「実は、助けてもらいたいんだけどこっちに出て来れないかな〜?」

 か「今からですか?」

T氏「出来たらそうして欲しいんだけど...駄目かな〜?」

 か「(駄目に決まってんだろっ!) いいっすよ、で、今何処にいるんすか?」

T氏「福岡」

 か「店の名前で言われても判かんないっすよ、何ビルです?」

T氏「いや、店名じゃなくて福岡県」

 か「...九州の?」

T氏「そう!九州の!」

 か「ちょっと今からは...」

T氏「上には僕から話を通しておくからさ、

   機材一式積んでこれから来てよっ!じゃっ」

 か「じゃって、Tさん、ちょっとTさん、Tさん?お〜い切るな〜っ!」


”あっち” への誘いは、T氏のこの一本の電話から始まったのです。

電話を一方的に切られた後、泣きながら仕事道具を車に積み込んだ私は、

一路福岡を目指し片道1000キロの道程をこれまた泣きながらひた走るのでありました。

翌日(当日?)のお昼前には福岡に辿り着く事が出来、T氏に博多ラーメン一杯で

黙らされた私は、現場で助けて欲しいと言う訳をやっと聞く(感じる)ことが出来ました。

それは、かなりヤバそうな雰囲気を醸し出して佇んでおりました。


 か「...井戸?(こりゃ貞子でも出そうだね)」

T氏「うん、井戸。」

 か「もう埋めたんですか?」

T氏「うん、埋めた。」

 か「ちゃんと祓いました?」

T氏「.......」

 か「黙んないで下さいよ、ちゃんと祓ったんですよねっ?」

T氏「.......」

 か「マジっすか?」

T氏「僕が来た時にはもう埋まった後だったんだよね、...しかも発生土で...」

 か「発生土?」

T氏「そう、発生土。(現場内で工事中に出る土の事)

   しかもごみがぎっしり混ざったやつ」

 か「.......」


この業界で「井戸」を埋めると云う行為は日常的な事なのですが、行為が

行為なだけにそれなりの手続きを踏まえないと、非日常的な事もよく起こるのです。

今回も日常的な事を非日常的な方法で行った為、工事関係者に障ったのでしょう。


 か「で、どうするんですか?」

T氏「どうしよう?」

 か「で、どうしたいんですか?」

T氏「.......」

 か「Tさん?」

T氏「.......」


ここまでなら”こっち”で済んだのですが、”あっち”はその日の夜やって来たのです。

現場事務所で今後の対応策を一通り検討した後、

私はT氏と同じ宿に泊まる事になりました。

T氏の部屋で明日の打合せと称して2人で静かに酒盛りをする事と為りました。


T氏「実はさ、この現場に来てから毎晩なんだよね」

 か「酒盛りがですか?」

T氏「...金縛り」

 か「は?」

T氏「最初は疲れてるのかなって思ってたんだけど...」

 か「だけど?」

T氏「本当は憑かれてるのかなって...」

 か「ははは...毎晩金縛りですか...」

T氏「うん、毎晩憑かれるから、疲れちゃったよ」

 か「...(おいおい、洒落にならんぞ)」

T氏「でね、かずさん来てくれたからさ、僕、明日本社に帰るね」

 か「へ?マジっすか?(ちょっとまて、本当に洒落にならんぞ!)」

T氏「うん、上には僕から話を通しておくからさ、明日からお願いね」


いつもの調子でT氏に押し切られ、明日から現場責任者に

させられた私は不承々々自室に戻り酒の力を借りて寝る事にしました。

どれくらい時間がたったのでしょうか、

ふと寝返りを打つと部屋の襖が開く気配がするでわないですか。 

(Tさんが起しに来たのかな?)

(待てよ、朝にしては、障子を開けてた割には暗すぎるぞ?)


その夜は蒸し暑く、私は部屋の窓と障子を少し開けて寝ていたのです。


(もしかして...)


そう思った時にはもう体がピクリともしませんでした。

そして襖を開けて入ってきたそれは、

畳に足を擦るような音をたてて近付いてくるではないですか。


(これは、夢だ。寝る前にあんな話をしたから潜在意識が想像してるだけだ!)


何度も自分自身に言い聞かせました。

どれくらい経ったでしょうか、また体が動くようになりました。


(きっと夢でも見てたんだろう、もう一度寝よ)


そう思った瞬間でした、


  「 で て け 」 


私の耳のすぐ横からはっきりとした、押し殺した男の声が聞こえてきたのです。

意識が遠のいていくのが自分でも判りました。

気が付くと、もう既に朝になっておりました。

異常に体が疲れているのが気になりましたが、

気合で仕事着に着替えT氏の待つロビーへと向かいました。


T氏「おはよう、いや〜久し振りによく寝れたよ。かずさんのお陰かな?」

 か「?」

T氏「昨日、そっちに行ったでしょ?」

 か「誰が?」

T氏「実はね、昨晩も僕の所に来たんだけどさ、

  駄目、僕じゃ無理、責任者と話し合ってって言ってやたんだよね〜。」 

 か「?」

T氏「そしたらさ、金縛りすぐに解けたよ。そっち行かなかった?」

 か「...(やられた)」  


まんまとやられました。

始発の飛行機で爽やかな笑顔と共にT氏は名古屋へ飛んで行きました。

残された私は、一日で終わる仕事を10日も費やして、

しかも毎晩の陳情、苦情で本当に憑かれて、疲れて大変な現場でした。


後日談もあるのですがまたの機会に致します。

長々とお付き合い下さいまして有難うございました。





     戻る