あっちの世界ゾ〜ン第七十七夜「Kの一族の謎」

さんがつうさぎさん談


「俺、死ぬかもしれない。」

香川の片田舎に住む友人Kから相談を受けたのは今から3年ぐらい前のことでした。

主人が長い休みのおりなどよく遊びに行っていたKの家は応仁の乱の頃からの

由緒ある家で彼の家の周りは全て彼の家から分家した親戚でした。

その半年前くらいから古い分家から長男ばかりが

謎の事故や病気で次々と命を落としていたのです。

その数6人。ほんの小さな地域で半年で6件もの葬式が出たというのです。

それも働き盛りの40代から20代の若い者までとても死ぬように思えなかった人ばかり・・・。

残されたのは一番新しい分家の長男と本家の長男であるKと2人だけになっていました。

ところが私達がKからその話を聞くほんの数週間前に新しい分家の長男が事故で入院し、

今も予断を許さない状況にあるばかりか、K自身も数日前に謎のアレルギーで救急車で

病院にかつぎ込まれ、退院してきたばかりだというのです。

その話を聞いた直後、私は耳鳴りがしはじめました。

そして、まるで自分でしゃべる意思がないのに次から次へと言葉が溢れてきました。

「K、家の裏に6体並んだ道祖神があるでしょう。今は彼岸花が咲いているはず。

 その前に道がある。その道は途中で2股に分かれるが裏山に行く方の道には

 大きな石がある。裏山に行く道は草や木にに覆われてまるで獣道のようになっているが

 かき分けてしばらく行くと不意に木がなくなって拓けた場所に出る。

 そこに自然に在った石とは違う切り出された大きな石があるはず。それを祀るように。」

一気にそう告げると私の耳鳴りは治まりました。


主人が

「馬鹿馬鹿しいことを・・・」

と言いかけた瞬間、Kが制止しました。

「『石を祀れ』っていうんだな。」

「あたしは良く分からないけど・・・あたしそう言っていたよね(T_T)」

Kの顔は真っ青でした。

「実はあまりにおかしな事が起こりすぎるので

 両親が俺の名前を決める時にお願いした拝みさん(占い師らしい)に聞きにいったんや。

 そこでも裏山の石を祀れと言われたんだけどその石がまだ見つかっていないんや・・・。」

その日は私自身あまり体調が良くなくなり

(長距離を走ったような脱力感と倦怠感)早々に彼の家を辞しました。

翌朝、Kから電話がありました。

早朝からKとKの父は裏山に上って私の言ったとおりの場所を探したそうです。

一言一句違わずにその通り石はあったそうです。

「ちょっと話したいことがあるからまた家に来てくれ。」


その日の夜、私と主人はまたKの家に行きました。

「裏の新屋の長男坊、今朝から急に容態が良くなった。」

「あぁ・・・それは良かったね・・・」

「俺らが例の石を祀った直後から劇的に良くなったそうだ。

 昨日まで危篤状態だったんだ!」

私と主人はごくりと息を呑みました。

「これを見て欲しい。」

Kは1冊の小冊子を私達の目の前に置きました。

「昨日の晩、お前らが帰った後新屋に行ってうさぎさんがした話をしたんや。

 で、俺と父ちゃんは朝から石を探しに行った。

 新屋のおばちゃんは病院に行っていたんだけど

 何となく息子が事故を起こしたときに持っていた物を調べたらしい。

 そしたらこれが出てきたんや。」


それはその土地にまつわる伝説などを郷土史研究家が調べた学術資料でした。

Kはそれを読んでまた青くなったそうです。

裏山にはかつて弘法大師がアラガミを封印したという伝説があったそうなのです。

そして封印の要に周りを囲むように6つの祠が設置されたとか・・・。

Kが石を祀ってきた場所はその6つの封印の内の1つでした。

「これ、見たことあった?」

Kは尋ねました。けれど私達はもちろんそんな資料など見たことはありませんでした。

Kも知らなかったし、Kが知らないことを主人に言うはずもなく当然私も知りませんでした。

私達は当時香川に引っ越してきたばかりで主人は学生時代まではよく遊びに来ていたらしい

のですが、私に至っては結婚前に1回来ただけでKの家の裏まで見たことがなかったのです。

地理に疎い私は弘法大師と香川県の繋がりさえ良く分からなかったときです。

しかし、裏の道祖神から彼岸花、分かれ道の石、

急に拓けた場所にあった石まで全て私が言ったとおりだったそうです。


一体Kの一族の身に何が起こったのか?

そしてあの時私の口から出てきた言葉は誰の物だったのか?

未だに謎のままです。


ちなみにその学術資料が世に出されたのはKの一族に災難が降りかかるようになった半年前。

調査をした学者は・・・資料が発刊される前に精神を病み、

回復しないまま資料が発刊された直後に亡くなったそうです。





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