あっちの世界ゾ〜ン第八十壱夜「地下の風呂場」

ことりさん談


京都に旅行に行った時の話。

その旅館は、修学旅行等によく使われるらしく、結構部屋数が多かった。

が、私達が泊まった日は、なぜか3組くらいしか宿泊客がいなかった。

早めに着いてしまったので、荷物を預けてしばらく観光してから

夕方旅館に戻ると、食事の時間まで30分ほどあった。

部屋にもお風呂は付いているのだが、地下に大浴場があるらしい。

「速攻入れば、食事の時間に間に合うよね。」

ダッシュで地下に行く。

・・・少人数のため、大浴場は閉まっていた。(;;)

がっかりして、隣の小浴場に入る。

誰もいない。ロッカーの中も空だ。

風呂場との間は、曇り硝子の引き戸で仕切られていた。

お湯の流れてる音がする。

一番、風呂場に近い位置で、上着を脱いでブラに手をかけた時だった。


「 バサッ 」


風呂場との間の曇り硝子に、黒くて長い、髪の毛のようなものが内側からたたきつけられた。

私は一瞬、固まった。

着替えがないのに、先に入ってる人がいたのか?

でも、しばらく固まってても、そんな気配はしない。

何かムカついたので、私は風呂の入り口の鍵をかけに行った。

戻って思いきり硝子戸を開けてみる。

左右、4人ずつくらいの洗い場があって、奥に湯船。四方は壁。全部壁。

換気口とか見てみたけど、開けた形跡なんてない。

お湯がこんこんと湧き出ていた。

眉間にシワを寄せつつ、お風呂に入って体を洗い湯船につかる。

なんか気持ち悪いので、すぐにあがった。

その後は何にもなかったけれど、地下にお風呂を作るのって、絶対良くないと思う。





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