こっちの世界ゾ〜ン第四十四夜「深夜のサバイバルゲーム(こっちの世界編)」

楯野恒雪(渡し守)さん談


例によって、サバイバルゲームをやっていた友人から聞いた話です。


彼らはいつものように奥多摩の雑木林で夜間戦闘を楽しんでいました。

いつもと違うことが1つあるとすれば、彼らの一人が新兵器を持っていたことです。

赤外線暗視装置付ゴーグル……これをつけていると

物体の熱分布を見ることができるという代物で、当時30万円くらいしたそうな。

Aさんは自慢げにそれを仲間に見せびらかし、

「今日の勝負はもらったぜ」と息まいていたそうです。

後でどんな恐ろしいものを見ることになるかも知らずに……。


さて、ゲームが始まってみると、敵チームはAさんの新兵器を警戒してか、

待ち伏せ&スナイパー作戦に出、なかなか姿を現わしません。

何しろゲーム開始後20分経ってもエアガンの銃声ひとつしないのです。

完全な膠着状態。

この展開に痺れを切らしたのが、他ならぬAさん。

夏のボーナスをはたいて買った自慢の品が

役に立たないのを不満に思ったのか、自ら獲物を探しに行ってしまいました。

真っ暗な雑木林を移動すること数分。

ついにAさんは木の陰にうずくまっている人型の発熱体を発見します。

喜び勇んだAさんは、今夜最初の獲物に向かってフルオートでBB弾をブチ込みました。

すると、その熱源は


「ひゃぉぅ」


という素っ頓狂な悲鳴を上げるや、転がるようにして逃げて行きました。

「!?」

ゴーグルを外して、自分が何を撃ったのか確認する暇もあればこそ。

どこからかタタタタタンという乾いた銃声と、意味不明の悲鳴が幾度か聞こえ、

続いて“戦闘中止”を告げる笛の音が響きました。

「なんだったんだ、今のは?」

集合場所に向かおうとするAさんは、何やら辺りが酒臭いのに気づきました。

さっきまで男(後に仲間の証言から「背広を着たサラリーマン風の男」だったことが判明)

がいた場所を見てみると、そこには飲みかけのカップ酒と、食べかけの弁当

(ホカ弁ではなく手製のもの)、そして大きな紙袋が地面に転がっていました。

Aさんが紙袋を調べると、中には封の切ってないポッキー1箱と

軍手、カッターナイフ、ロープ、そして封筒が1通入っていました。

何となく嫌な予感がしつつも、封筒を見ると、そこには


「遺書」


と書かれていました。

しばらくして現場を訪れたサバゲーチーム一同、

その「人生の全てが凝縮された空間」に感心することしきりでありましたとさ。


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爆裂ももちゃんさん談


楯野恒雪 様

笑ってはいけない、と思いつつも笑ってしまいました。

手作りのお弁当とポッキーが胸を締付けましたが・・・。

でも、きっと彼も突然の攻撃で我に返って

「こっちの世界」に戻ってこられたのではないでしょうか。

いまごろ「俺が以前死のうと思って山に入ったらさぁ〜・・・。」

なんて、笑い話にしていてくれたらいいなぁ・・・。


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螺旋さん談


渡し守の楯野さんは本当にご無沙汰です。

しかし、よく考えるとものすごく恐ろしい話のような。。。

そのかたは一体、どこに行ってしまったんでしょうか?

や、まてよ。もう少し遅くにはじめてたら、動かない熱源になってたり。。。うわぁ!


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ぱわっちさん談


楯野恒雪さん>

何故にポッキーが「最後の晩餐」なのかと思うと笑えます。


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楯野恒雪(渡し守)さん談


レスありがとうございます。

御無沙汰しておりました。ここんとこ、ネタがないのでROMしてたとこだったのですが、

ここのカキコミを読んだ友人から、

有難くも再びサバゲーネタを教えてもらい、久々の書き込みとあいなりました。

それにしても、私も聞いた時「うむう」と唸ったのが、


「何故にポッキー?」


というコトでした。その後サラリーマン氏はどうなったのでしょう?

しかし、死ぬ前に、携帯できる食料で何か食いたいものは?と考えると、

意外と思い付かないものですよね。

私の大好物は蕎麦ですが、コイツは山の中に持っていくワケにもいきません。

ではどうするか……

やっぱ思い出の御菓子を1つというコトになってしまうんでしょうかねぇ?

Aさんの赤外線スコープの話はもう一本あります。

そのうち書き込みますので、どうぞ御楽しみに。


TO:螺旋さん

Aさんが痺れを切らすのが、あと30分遅かったら……

「動かない熱源」に集中砲火を食らわせて、とんでもない事件になっていた可能性が(^^;)

あれで、そのサラリーマン風の方が自殺を思い留まってくれたのなら良いのですか。





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