こっちの世界ゾ〜ン第六十七夜「シャベル」

楯野恒雪(渡し守)さん談


「シャベルを熱っつくしてさあ──」

今日の午後、仕事の打ち合わせ帰りの京王線の車内。

私の隣には中学生くらいの4人連れが座っていました。

大声で笑いながら話す彼らの声が、

午睡をむさぼろうとしていた私の耳に飛び込んできました。


「ジュッ! っていってさ、それからグツグツ煮えて泡立ち始めんだよ」

「融けちゃうの?」

「形そのままでさ、プチプチしてんだ。ウンコ、ブリブリ洩らしてさ、それがまたジュー

ジューいってさ」

「へー、カエルだとそんななるんだ」

「オレもさ、××(騒音のため聞き取れず)にさ、熱くしたシャベル突っ込んだらさ、

千切れてチリチリチリって……」

「あ、オレそれカマキリでやったことある」

「キューっつーんだよな」

「そうそう」


中学生たちは、まるでゲームの話でもするように、嬉しそうに楽しそうに、

話しながら電車を下りていきました。私には、彼らはごく普通の中学生に見えました。

近年の子供たちの精神の荒み具合、新聞や本で聞いてはいたものの、

いざ自分で目の当たりにしてみるて、改めて冷たい戦慄が背筋を走りました。

やはり……一番恐いのは、人間か……?





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