こっちの世界ゾ〜ン第十四夜「目撃談、私は見た!闇に揺れる白い影 !!!!!」

犬神さん談


先日の夜中、人気の無い公園を歩いていた時の話しです。

その公園は、10年ほど前までは雑木林になっていて、

当時20歳前後の女性が自殺した場所にありました。

僕は、自殺したその女性の遺体を見てしまっている事もあり、

普段ならば絶対に夜には通らないのですが、ちょっとした事情により

どうしてもそこを通らなければならなくなりました。

・・・・・風も無いし、正に化けて出るにはちょうどいいよな・・・

風も無く、雨上がりで肌寒い夜でした。

その公園は「出る」という噂もあったせいか、余計に肌寒く感じます。

静かに沸き上がる恐怖感。それを打ち消そうと、白々しく別の事を考えようとする自分。

そんな自分に気が付いた時、ふと一陣の風が正面の草むらを揺らしました。

・・・・・・・・何かいる!

草むらの影にはベンチがあり、一瞬、ほんの少しですが、そこに白い影が見えたのです。

--人か?いや、人にしては変だ。もっとスルリとした感じの物だった・・・・

影が白い服を着た人だとすれば、もっと凹凸があるはずです。

ですが、その影は滑らかな曲線を描いて草むらに消えていました。

じゃぁ、猫か何かか?・・・・それも違う。

雰囲気は似ているけど、大きさがぜんぜん違う・・・・

あれは確かに女性の背中だ。と、いうことは、やっぱり・・・・・・・・

行くなと命令する心とは反対に草むらへ向かう足。好奇心(?)に支配される心。

だめだ、こっちから行ったのでは見つかる。せめて横から回り込まないと・・

もう一度風が吹く。今度は良く見えないが、そこにいる事だけは確かだ。

ゆっくりと離れたところを回る。

気づかれないように。静かに・・・・・・見えた!


案の定、

白い影はベンチに仰向けになったおにいさんの上で、半裸で悶えるおねぇさんでした。


その公園が雑木林だった頃、若い女性がそこで首を吊りました。

当時は幽霊の噂で誰も近寄らなかった雑木林。

宅地造成が始まって噂もだんだんと薄れ、

新しい住人たちはそんな出来事を知らないで暮らしています。


劇終





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