*私は目が悪いので以下の文章は多少割り引いてお読み下さい。

もう10数年も前の夏の事ですが、友人のA、Tの2人とフェリーで八丈島に行きました。
民宿に荷物を置くやいなや、海に泳ぎに行きました。
海水浴場は水深が深い為か水底にビルの廃材が敷き詰めてありました。
鉄骨のはみ出たコンクリート塊を踏みしめながら、泳ぎの達者な
AとTは沖の方へ、私はガレキの隙間に群生していたカニと戯れておりました。
水深はへそのちょっと上ぐらいだったでしょうか、
ふと足元に目をやるとコンクリート塊から人間の腕(肘から先)が
にょっとはみ出ているではありませんか!
「あああ、ガレキの下に人が!」
ビビッていると波が来て水面をかき乱し腕は見えなくなりました。
見間違えかと思いましたが、波が退いた後も腕は依然としてありました。
が、それはガレキの下から生えてわけではなく、水底に横たわった
髪の長い、若い女性の腕でした。紺のビキニを身にまとい私を見上げています。
(なんだ、人が居たのか、はービックリした)。
私はほっとして彼女を見つめましたが

あれれ、この人は浮力の高い海水中に、どうやってずっと沈んでいられるのだろう?
☆・・・ひょひょひょっとしてどど土左衛門!?

そう思った瞬間再び波が来て水面をかき乱しました。
次に波が引いた時には彼女の姿はありませんでした。
やはり生きてる人でそのうち浮かんでくるのではないか、
という私の推理も空しく、しばらくその場に
たたずんでいたものの海中からは誰も上がってきませんでした。